イチローが加入した今季のマーリンズは開幕から連敗続きで出遅れたが、取材をしているとチームの今季にかける思いがひしひしと伝わる。何せオフには主砲のジアンカルロ・スタントンとメジャー最高額となる13年3億2500万ドル(約390億円)の大型長期契約を結んだのを皮切りに戦力補強を積極的に行っただけでなく、遠征用にオーダーメードの全席ファーストクラス特別チャーター機を使い、選手の食事には腕利きの専属シェフ2人を雇用。勝つためにあらゆる環境を整えてた。

 チームが4月13日から今季初めての遠征でアトランタ、ニューヨーク、フィラデルフィアを回ったときには、ジェフリー・ロリア・オーナー、デービッド・サムソン社長、ダグ・ジェニングスGMが同行していた。GMが遠征に同行しているチームはよくあるが、球団オーナーや社長まで同行することは珍しく、それだけで球団幹部の思い入れの強さが伝わってくる。ロリア・オーナーは評判は悪いが、遠征先では自ら選手に声を掛け、練習中にイチローとも談笑するなど、気さくな雰囲気だった。

 試合前のクラブハウスをのぞくと、選手がチームで作ったおそろいのTシャツを着ている。Tシャツの胸には「27 OUTS,NO MORE」や「FOR THE TEAM」といったスローガンがプリントされていた。それも、今季はチーム一丸で上を目指そうという思いの現れだ。開幕当初は負けが込み、レドモンド監督解任かという臆測報道も出たが、実際は球団幹部と同監督が監督室でなごやかに談笑していることが多く、ピリピリとしたムードはなかった。ジェニングスGMは「開幕スタートでつまずいたのは非常にがっかり。しかし、こういうことが起こるのもベースボールだからね」と話していた。まだ4月、シーズンはこれからだ。