イチロー選手が所属するマーリンズが新監督探しを始めたと伝えられている。すでに候補に名が挙がっているのが、ダスティ・ベーカー氏(66)とマニー・アクタ氏(46)だ。イチロー選手が来季残留する可能性が高いとも伝えられているマーリンズなので、誰が新監督に就任するのかは気になるところ。うわさ通りベーカー氏なら適任ではないかと、今から期待している。

 ベーカー氏は93年から13年までジャイアンツ、カブス、レッズで計20年間指揮を執った大ベテランで、最優秀監督賞を3度受賞している。しかしベーカー監督といって思い浮かぶのは、数字上の実績よりも、どの選手にも慕われたその人柄だ。強く印象に残っているのは02年、新庄剛志氏がジャイアンツでプレーしたときのことだ。当時もチーム内の選手たちに好かれていたが、他球団の選手からも「ベーカー監督の下で1度プレーしてみたい」という声がたくさんあった。新庄氏の入団会見のときは、同氏が初めて会ったベーカー監督から流ちょうな日本語で話しかけられ「まるでネーティブみたいだった」と驚いていた。夫人のメリッサさんがアジアにルーツを持つ方なので監督自身もアジアになじみがあるのだろうが、それにしても意外だった。それだけに新庄氏も同監督にはすぐに好感を持ったと思う。このように選手の心をつかむのがうまい監督なのだ。

 試合の予習を非常にマメに行う監督でもあった。試合前の監督室でメディアの取材を受けるときは、必ず試合用のデータを見ながらメモを取っていた。最近のメジャーでは左投手に右打者、右投手に左打者をぶつけるということを機械的に行う監督が多いが、ベーカー監督はそれよりも過去の対戦成績を丹念に見て、データを活用して打線を組むタイプだった。つまり選手起用もフェアで選手にとってやりやすく、しかもバリー・ボンズを長年監督してきたためスーパースターの扱いも慣れている。マーリンズにマッチしていると思うがどうか。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)