ウインター・ミーティングも開幕しメジャーはストーブリーグ真っただ中だが、最近は代理人による売り込みもずいぶんクリエーティブになってきたようだ。先日、メッツからFAとなったヨエニス・セスペデス外野手の代理人が手の込んだプレゼンテーション資料を作成し話題になった。

 それはまるでハードカバーの高級書籍のような作りになっており、タイトルはセスペデスの背番号にちなんで「52レビューズ」と付けられている。レビューの中にはセスペデスを知る監督、コーチ、チームメート、フロント幹部、番記者らのインタビューが挿入されており、セスペデスの選手像、人物像を浮き彫りにした内容になっている。また表紙のハードカバー内側にはビデオプレーヤーが埋め込まれており、プレイボタンを押すとセスペデスの攻守含めたハイライト映像がBGM付で流れるという。セスペデスの代理人事務所はラップ歌手でプロデューサーのJay-Zが設立したロック・ネーション・スポーツだが、いかにもアーティストらしい感性だ。

 ESPNによると、FA選手を球団に売り込む際のプレゼン資料は年々手の込んだものになってきており、その先駆的存在は敏腕代理人で知られるスコット・ボラス氏だという。ボラス氏の場合は、選手の成績、数字を非常に細かく分析し膨大な量のデータをファイルにして交渉に使う。その後、タブレット端末が世に出てくると、タブレットに映像やデータを入力し交渉に使用する代理人も現れた。代理人による選手の売り込みといえば以前は、球団幹部に選手のプロモーションビデオを小包で送付するのが普通で、代理人と話をしていると「あの球団にこの選手のビデオを送ったよ」などということを教えてくれたものだが、今はネットで手軽に選手のデータも取得できるの時代なので、選手の売り込みもただビデオを送るという単純なものではなくなったというわけだ。

 さて今年のウインターミーティングの舞台は、テネシー州ナッシュビル。そこで球団と選手、代理人の間でどんな交渉が繰り広げられるか楽しみだ。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)