データ分析を駆使し少ない資金力で勝てるチームを作るという2000年代初頭のアスレチックスを描いた「マネー・ボール」(マイケル・ルイス著)が出版されてからもう13年がたった。野球の記録を分析する「セイバーメトリクス」はあれからさまざまな進化を遂げ、より複雑化、多様化して球界全体に浸透。今やメジャーリーグとセイバーメトリクスは、切っても切れない関係になっているといっていい。

 そんな今、米国がまたスポーツ分析の歴史的な新たな一歩を踏み出した。ニューヨーク州にあるシラキュース大学が、今秋の新学期からスポーツ分析学の学科を新設すると発表したのだ。大学のスポーツ分析学科は、全米でも初。米労働統計局によると、米国での各業種の分析専門職に就く労働者数は毎年平均27%増加しており、他の職種が年平均11%増というのに比べ大きな増加傾向を示しているそうで、同学科の卒業生にどんな進路が用意されているのかにも注目が集まりそうだという。

 同大学は、スポーツ分析学科をアイビーリーグのような名門に育てることを目指しており、カリキュラムもより厳しいものを組み、優秀な学生を集めようとしている。学科の特徴は、数学的な分析を必須科目としていることはもちろんだが、それと平行しコミュニケーションと外国語の科目も必須になっているという点だ。コミュニケーションは誰かに何かを伝える能力を伸ばすことを目的としており、分析専門家は「数字を分析し、さらにそれについてなぜその分析に至り、それがどう役立つのかを説明できなければならない」ためだという。外国語については、スポーツはグローバルなものであるという考えに基づいている。

 セイバーメトリクスは今や他スポーツでも活用されてきており、例えばプロバスケットボールNBAなどではより得点効率の高い選手の組み合わせなどのデータを分析し、実際の試合に生かすということをしている。サッカー、テニス、ゴルフなどグローバルなスポーツにセイバーメトリクスが広がっていけば、分析専門家は確かに外国語を駆使しグローバルに活躍することになっていくだろう。スポーツ分析という分野は、さらに発展を遂げていきそうだ。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)