ロイヤルズの若きエース、ヨルダノ・ベンチュラ投手が、自動車運転中の事故により25歳で急逝したのは大きな衝撃だった。同じ日に、インディアンスや韓国プロ野球でプレーしていたアンディ・マルテ内野手も交通事故で33歳で死去。別々の事故だったがどちらもドミニカ共和国で、シーズンオフの帰省中に起こった悲劇だった。

 ドミニカ共和国出身の選手では、14年に将来有望な22歳の強打者でベンチュラの親友でもあったカージナルスのオスカー・タバレスも交通事故で亡くなり、昨年1年間ではヤンキース、オリオールズ、アストロズの若手有望株3人がやはり交通事故死している。ドミニカ共和国ではなぜこれほどまでに、若い選手が事故で命を落とすのか。

 1つには、世界で最も劣悪な交通事情と、死亡事故発生率の高さがある。WHO(世界保健機関)のデータによると、2015年の1年間の西半球各国で、車の死亡事故発生率は同国が最も高く、人口10万人に対する死亡者は29・3人だった。また各国の飲酒運転に対する法の厳格な施行状況に関する調査では、最も緩いと判定できる国を1とし10までランクをつけた場合、ドミニカ共和国は2にランク、スピード違反の取り締まりは3にランクされている。

 ドミニカ共和国生まれで、今オフに同国冬季リーグの監督を務めているマリナーズのマニー・アクタ三塁コーチ(48)は、同国の運転事情についてワシントン・ポスト紙にこう話している。「ここで車を運転するのは、西部の荒野を走るか危険なエクストリームスポーツ(Xゲーム)をやっているようなもの。法や秩序など存在しない。警官の数も少ないし、いたとしても彼らは安月給なのでお金を渡せば簡単に違反をなかったことにしてくれる。私はこの国の出身だが、車は運転しないし、車が必要な時は必ず運転手を雇っている。野球界に限った話ではなく、根深い、文化の問題だ。この国ではどういうわけか、シートベルトを締めずに運転することが、格好良いということになってしまっている」。

 最近、メジャーの各球団の管理職に就く人たちは、ドミニカ共和国出身の若い選手に対して運転に関する注意喚起を徹底するようになったそうだ。それでも悲劇はなくならず、今後もこの問題は球界の課題の1つになっていくだろう。