昨年8月にヤンキースのユニホームを脱ぎ事実上の現役引退となったアレックス・ロドリゲス氏(41)が、ヤンキースの特別アドバイザーとして今季はキャンプからフル回転することになりそうだ。

 ハル・スタインブレナー・オーナーがニューヨークの地元メディアに明かしたところによると、2月半ばから始まるキャンプで若手を指導する予定で、キャンプ序盤と中盤の2度、参加するという。

 A・ロッドは薬物スキャンダルのダーティなイメージがついてしまったものの、歴代4位の通算696本塁打を放ち、全盛期は圧倒的な実力を誇った。スーパースター級の選手には天才肌が多いイメージだが、A・ロッドはむしろ努力型で、練習好きという印象だった。

 A・ロッドがヤンキースでプレーしていたときによく覚えているのは、アスレチックスの本拠地オークランドコロシアムに遠征したときのことだ。古く狭い球場なので、そのときは練習施設が空いていなかったのか、A・ロッドがクラブハウス前の狭い通路でトレーニングをしている場面に出くわした。コンディショニングコーチと2人でボールを使った、おそらくアジリティのトレーニングのようだったが、狭いスペースながら集中した様子で同じ動きを延々と反復していた。

 現役晩年の頃は、早出で特打、特守もよくやっていた。すでに衰えていたとはいえ球界を代表するスターだった選手が、早出をするというのは珍しい。過去のイメージとは裏腹に、ある面では非常に泥くさく真面目な選手だった。そう考えると、若手を指導するという根気のいる仕事には、案外向いているかもしれない。スタインブレナー・オーナーも「彼が若手に与える影響がいかに大きいか。それだけ良い指導者であり、手本となる存在だ」とA・ロッドを高く買っており、今後は可能な限り球団と関わってほしいという。

 現在、A・ロッドは自身でビジネスを展開しながら、イレギュラーでメジャーの解説をこなし、さらには今年からテレビのリアリティーショー番組の司会にも抜てきと、引っ張りだこ状態。そのためヤンキースのためにどれくらい時間を割けるのかは未知数だが、一時は険悪な関係に陥ったフロントと今は蜜月の間柄になっていることは間違いなく、今後もヤンキースとのかかわりが多くなりそうだ。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)