キャンプ初日というのは毎年、すべてのチームが明るい希望に満ちている。野球ファンの間ではこの日に「明けましておめでとう」のあいさつが交わされるが米国でもやはり同じで、キャンプ地の記者席でも「ハッピー・ニュー・イヤー」というあいさつの声が聞こえてくる。

 ヤンキースのキャンプ初日も、やはり希望に満ちあふれた雰囲気は同じだ。昨季まで現役だったアレックス・ロドリゲス氏やマーク・テシェイラ氏らベテランのスター選手がほとんどいなくなったため寂しさもあったが、メジャーで定位置を取ってやろうと意気込む若手がひしめくクラブハウスには活気が漂う。

 これから始まるキャンプが楽しみでたまらないという顔をしている若手の中で、ひときわ目を輝かせていたのが22歳のルイス・セベリーノ投手だった。ヤンキースの先発ローテは今季、開幕投手に指名された田中将大、36歳ベテラン左腕のCC・サバシア、5年目のマイケル・ピネダと3番手までは決定しているが、残り2枠はセベリーノら5人で争うことになる。

 セベリーノの先発ローテ入りにかける意気込みは大変なもので、オフシーズンに約4・5キロ減量して体を絞り、投球フォームの修正に取り組んだ。その際に指導を頼んだのが何と、15年に野球殿堂入りしたペドロ・マルティネス氏だったという。2人は同じドミニカ共和国出身だが、ペドロといえばヤンキースとは同地区ライバル関係にあるレッドソックスのレジェンド。ヤンキースとレッドソックスの選手が親しくすると大きなニュースになるほど交流がはばかられる雰囲気のある両球団だが、セベリーノはそれでも憧れの人に教えを請いたいと「共通の知人であるドミニカ共和国のメディア関係者に電話番号を教えてもらい、思い切って電話をした。緊張した」そうだ。

 レジェンドからの直接指導は母国で何度も行われ、昨季精彩を欠いていたチェンジアップの修正に重点的に取り組み、今はすっかり自信をつけている様子。ジラルディ監督も「セベリーノがペドロのような投球をすれば、間違いなく先発ローテ入りだ」と期待している。日本の選手同士でもこうした同国のよしみで助言を得たり助け合うということはよくあると思うが、中南米選手たちもやはり頼るべきは同国の先輩というのは面白い。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)