ヤンキース田中将大投手が5月に大不振に陥り、米メディアの間でも大きな話題になった。5月14日のアストロズ戦は自己ワーストの自責点8で自己最短タイの1回1/3で降板。同20日のレイズ戦は9安打、6失点で3回で降板と、2試合連続KO。このレイズには4月2日の開幕戦でも8安打、7失点で2回2/3でKOされているため余計に衝撃が大きく、田中自身「キャリア通しての、最も悪い2登板じゃないかというくらい」と表現した。

 アストロズとレイズ、この2つの球団の共通点はというと、どちらもデータ分析で最先端をいっているということだ。2015年にESPNが調査し発表した格付けによると、MLBの最先端データ分析「四天王」はアストロズ、レイズ、ヤンキース、レッドソックスだった。ただしレッドソックスは15年8月にデーブ・ドンブロウスキー氏が編成部門のトップになり、同氏がデータをそこまで重用するタイプではないため、ここ最近の四天王はレッドソックスを押しのけてドジャースが入っていきているのではないかと思われる。いずれにせよアストロズ、レイズの分析は最先端であり、他球団がやらないようなことをやるという意味でクリエーティブであるという印象だ。

 もちろん、ヤンキースも四天王のうちの1つである。

 先日、ブライアン・キャッシュマンGMに話を聞く機会があったのだが、ヤンキースのフロントは田中不振の原因を究明すべく投球を徹底的に分析していたそうだ。同GMはそれを「CSI:ザ・ブロンクス」と呼んでいた。CSIとは米国の人気ドラマで、最新科学を駆使した高い捜査技術を持つ警察の科学捜査班があらゆる難問を解決していくという内容なのだが、つまりヤンキースのフロントは最先端分析技術を駆使し、大勢のスタッフがかかわって不振の原因解明に当たったと言いたかったのだろう。「好調時と不調の現在のあらゆるデータを複数の登板から分析、比較した」という。

 具体的には球速、空振り率、その他の細かいスタッツなどのデータをチェックし、投球モーションについても腕の伸び、リリースポイントなどを分析。その結果「スプリットのキレと速球の制球が若干落ちている以外、大きな違いはない。ただ相手が彼にダメージを与えているのは事実」と同GM。アストロズやレイズがどう分析していたのか、分析が田中の不振に影響していたのか否かは不明だが、エースの不振の陰で、四天王同士のデータ分析合戦が繰り広げられていたのは確かだろう。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)