ニューヨークでは今季、8月14日から17日までサブウエーシリーズが行われた。ヤンキースとメッツ、リーグは違うが同じニューヨークに本拠地を置き地下鉄で互いの本拠地を行き来できる「ご近所ライバル」同士のこの対決は、メジャーリーグの交流戦の中でも特に有名なカード。マンハッタンを歩いていると、いずれかのチームのユニホームを着込んだファンの姿をいつも以上に多く見かけ、名物のエンパイアステートビルは両チームのカラーで彩られるなど、お祭りムードとなる。

 しかし1997年のインターリーグ開始から数え、サブウエーシリーズも今年で21年目。慣れもあってか、かつての異様な熱気は薄れてきた。

 メッツがまだ旧球場のシェイスタジアムを本拠地にしていた時代、球場にはエレベーターがほとんどなかったため試合終了後、ファンは緩いらせん状の坂を降りて球場を出るのだが、サブウエーシリーズでメッツが勝った日は、ファンが満員電車のように混雑したそのらせん坂で「レッツゴー・メッツ」と何度も声を張り上げながら帰っていくので、すさまじいほどの熱気と騒がしさを感じることができた。ヤンキースの方は、2010年に死去した名物ワンマンオーナーのジョージ・スタインブレナー氏がまだ健在だった頃「メッツに負けたら許さん」などとライバル心を燃やし、その発言のたびにシリーズが盛り上がった。

 今はライバル関係をあおる名物オーナーもおらず、かつてのロジャー・クレメンスとマイク・ピアザのような因縁のライバルもいない。どちらの球団も新球場になったが、旧球場よりも高級感にあふれ、ファンが大声で掛け声をかけながら帰っていくような雰囲気もなくなった。今季のサブウエーシリーズは連日スタンドがほぼ満員で観客動員が好調だったが、初期の時代の同シリーズとはやはり雰囲気が違う。

 ところでサブウエーシリーズといえば日本選手が過去20シーズン中17シーズンも出場しており、実になじみが深い。出場しなかったのは最初の97年と、00年、11年の3シーズン。97年はヤンキースに伊良部秀輝氏が入団したがサブウエーシリーズの時期はまだデビューしておらず、11年はメッツに五十嵐亮太投手(現ソフトバンク)が所属していたが、同シリーズでは登板しなかった。今季はヤンキース田中将大投手がサブウエーシリーズで登板予定だったが故障者リスト入りしてしまったため、日本選手が出場しないのは11年以来6年ぶり、4シーズン目となった。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)