ワイルドカードからリーグ優勝決定シリーズにまで進出し予想以上の快進撃を見せたヤンキースは、若手の台頭に注目が集まったが、ベテランの陰の力も大きかった。37歳のマット・ホリデー外野手、31歳のトッド・フレージャー内野手らを見ているとそう思う。

 昨オフにFAで移籍してきたホリデーは今季、注目の新人アーロン・ジャッジ外野手にとって師匠のような存在になっている。ジャッジにとっては少年時代から見てきた憧れの選手だったそうで、チームメートになり、打撃における理論的な話を聞いたり、選手としての立ち居振る舞いなどを見て学んでいるという。練習のときや遠征先で球場入りするときなども、ジャッジはホリデーにくっついて、いつも一緒にいる。ホリデーは非常に寡黙な選手で、試合後にたまに囲まれて取材を受けるとき以外は、言葉を発しているのを見たことがないというくらいもの静か。多くを語らず黙々と日々野球に組むその職人気質なところが、若手にはよい手本になっているのだろう。

 7月のトレード期限に加入したフレージャーは対照的に明るく気さくで、移籍早々からチームのムードメーカー的存在だ。私のような日本の記者たちにも気さくに「今日はマサが投げるんでしょ。知ってるよ」などと声をかけてくるし、常に笑顔を振りまいている。いろいろな記事を読んでも、フレージャーが少年時代から性格が良く、大学時代は模範的な学生だったというエピソードが紹介されている。メジャーリーガーとなってもその人柄はまったく変わっておらず、若手選手にとっても接しやすい先輩のようだ。

 データ分析が浸透しているメジャーリーグでは近年「チームの和」が強いチーム作りに欠かせないものと重視され、選手の性格をデータ化してチーム編成に活用している。性格分析の方法論がどのようなものなのか具体的に明らかにはなっていないし球団ごとに違いもあるだろうが、フィリーズのマット・クレンタックGMや元ブルージェイズのGMで現在ドジャースの編成副本部長を務めるアレックス・アンソポウロス氏らがその道にたけているとされている。私の想像だが「常にあいさつをする」「遠征の飛行機には早めに乗る」など、普段の言動を細かく項目にし、当てはまる項目をポイント制にしデータ化する、といった手法を使っているのではないだろうか。

 ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGMは98年から現職に就き古い時代のチーム編成の手法も熟知しているが、時代に非常に敏感で新しい手法やチーム作りの流行をいちはやく取り入れる柔軟なGMだ。ホリデーやフレージャーも、そうした性格データ分析を重視して獲得したのだろう。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)