昨年ドラフトでアスレチックスから1巡目全体9位指名を受けたカイラー・マレー外野手(21=オクラホマ大)が、アメフットの大学最優秀選手に贈られる「ハイズマントロフィー」を獲得し、MLBよりNFLへ進む可能性が高まっているという。

米国では学生時代に野球とアメフットの両方でスター選手となり、MLBとNFL両方のプロリーグから勧誘される選手が多い。アメフットを選んでNFLで活躍している選手には、野球界から「もし野球を選んでくれていれば」と惜しむ声が上がることもある。

現在NFLカンザスシティー・チーフスで活躍しているQBパトリック・マホームズ(23)もその1人だ。どこかで聞いた名前。そう、97、98年に横浜ベイスターズでプレーしたあのパット・マホームズ投手の息子さんだ。父が日本でプレーしていた当時、Jr.は2~3歳だった。

マホームズ父は横浜時代、1軍で2年間計21試合に登板し3勝8敗の成績に終わったが、親しみやすいキャラで記憶に残る選手だった。メジャーでは92年にツインズでデビューし、11年間で6球団を渡り歩き最後は独立リーグでプレーした苦労人だった。しかしマホームズJr.の方は、17年のNFLドラフトで1巡目に指名され、2年目の今季はレギュラーQBに抜てきされてNFLの記録をいくつも更新するほど実績を作り、あっという間にスター街道を駆け上がった。現在行われているポストシーズンでもチームが快進撃を続けており、日本時間21日に行われるカンファレンス・チャンピオンシップに進出した。

そんなマホームズJr.も学生時代は野球とアメフットの二刀流で、高校卒業時にはドラフト37巡目にタイガースから指名を受けた。当時は野手兼投手で、高校生ですでに96マイル(約155キロ)の剛速球を投げていたという。しかし下位指名だったため大学進学を選び、大学ではアメフットに夢中になった。

幼い頃のマホームズJr.は父にいつも球場に連れて行かれ、A・ロッドやジーターに野球の相手をしてもらったこともあるそうだ。そんな息子は自分と同じように野球選手になると思っていたという父は昨年、ニューヨーク・ニューズデー紙のインタビューで「息子は野球の世界で育った。1巡目指名を受ける可能性だってあったと思う。本人にも『お前ならメジャーリーガーになれる』と言ったよ。しかし息子の意志が固いと知り、今は毎試合観戦し応援している」と話している。

父がメジャーリーガーだったことから、米野球メディアもマホームズJr.に熱視線を送り、盛り上がっている。「Jr.は野球界が育てたようなもの」という論調の記事や、野球ジャーナリストの意見も見かける。チーフスがスーパーボウルまで進めば、さらに盛り上がりそうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)