来季から「最低3人ルール」が本当に導入されるのか、米球界で話題になっている。試合時間短縮のため、投手はマウンドに上がったら少なくとも打者3人と対戦するか、途中のイニングを終わらせるかしなければならず、ワンポイント登板が基本的にできなくなるルールだ。

3月にMLBの機構と選手会が導入することで一応の合意はしているが、チーム編成に影響を及ぼすルールであるにもかかわらず、各球団にはまだ通達されていないという。

このルール導入には反発が強い。もし無死満塁で登板した投手が最初の打者に1発を浴びて頭が真っ白になったとしても、そのまま続投し、あと2人に投げなければならない。試合が壊れる展開に歯止めがかからないと分かっていながら交代させることもできないとしたら、打たれる側は納得がいくだろうか。米メディアでは、このルールはほとんど時短に結び付かないということも指摘されている。

試合を長くしているの投手交代よりも、投球間隔だという。12月3日付のスポーツイラストレイテッド電子版によると、今季の平均試合時間は3時間10分で4年前より10分長くなり、投球間隔も平均24・9秒で、4年前より2・2秒長い。10年前と比べると試合時間は15分長くなり、投球間隔は2・9秒長くなっている。投球間隔が30秒以上を要する投手は、15年には2人だけだったが昨季は8人。今季は17人だった。

投球間隔が長くなっている要因は、本塁打を打てる打者が増え投手がより慎重に投げる場面が増えた、サイン盗みが横行し、それを避けるためバッテリー間のコミュニケーションも複雑になった、などが挙げられるだろう。投球間隔を20秒以内にするという「ピッチクロック」ルールはマイナーではすでに導入されており、労使協定が新しくなる22年以降、メジャーでも導入される可能性がある。

しかし、ピッチクロックも選手側からの反発が大きくなることは確実だ。MLBが今年のオープン戦で実験導入しようとしたがすぐに中止になったので、すでに反対の声が上がっているのかもしれない。ヤンキース田中将大投手(31)も先日のチャリティーイベントで言及していた。「(ピッチクロックは)本当にピッチャーにとっては死活問題だと思う。投手がいくら早くしようと思っても、打者が時間かけている人もいるし。どこから20秒なのか。(投げるときは)しっかり自分の考えというものは整理して、どういう意図を持って次の1球を投げるのか、というのはしっかり考えて投げたいですね」と否定的だった。

最低3人ルールもピッチクロックも試合展開に及ぼす影響が大きいだけに、選手側の反対を押し切る形での導入だけはしないことを願う。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)