エンゼルス大谷翔平投手(22)とブルージェイズのウラジーミル・ゲレロ内野手(22)によるMVP争いが、注目を集めている。

大谷当確の論調が優勢だが、9月に入りゲレロが猛追している印象だ。2人は本塁打王も争っているが、ゲレロはそれに加え打率、打点でもリーグ上位につけ、3冠王を狙える位置にいる。

大谷がベーブ・ルース以来1世紀ぶりの本格的二刀流なら、ゲレロもア・リーグ史上では9年ぶり11人目の快挙に挑んでおり、まれに見るハイレベルな争いだ。ブルージェイズのお膝元カナダのメディアは、当然のことながらゲレロ推し。先日は地元テレビ局の実況解説が「プレーオフ進出争いをしているチームに属するゲレロが選ばれるべき」と主張していた。

もう1つ、MVP受賞レースに影響を与えそうなデータがある。投票にセイバーメトリクス(野球統計学)的な分析が重視される昨今、注目したいのは「WAR」だ。

周知されてはいるだろうが念のために説明すると、WARは「Wins Above Replacement(ウインズ・アバウブ・リプレースメント)」の略で、その選手が出場した場合、代替選手と比べてチームに勝利をもたらす可能性がどれだけ上がるかを数値で示したもの。その選手が勝つためにどれだけ重要かということが、この指標で分かる。

米野球データサイト「ベースボール・リファレンス」のWARでは、大谷は頭1つ抜け両リーグトップの7・8。投打両方で結果を残し、ともに実績が加算されているため、やはり強い。一方のゲレロは6・1で同9位と、大谷に大きく差をつけられている。

ただし、このWARにはいくつか種類がある。ベースボール・リファレンスは「rWAR(またはbWAR)」と表記され、別のデータサイト「ベースボール・プロスペクタス」では「WARP」、「ファングラフス」のは「fWAR」と表記され、これが主要3WARと呼ばれ、それぞれ独自の算出方法を用いているため数値が異なる。

このうちfWARの各リーグ野手1位は、MVP受賞者と合致することが多い。データ時代の近年は特にその傾向が強く、2016年以降この5年間で同1位とMVPが異なったのは10人中、2017年と昨季のア・リーグ受賞者2人だけだ。昨季は60試合に短縮された異例のシーズン。2017年はfWARの野手1位がヤンキースのジャッジ外野手だったが、MVPは同野手2位だったアストロズのアルテューベ内野手が受賞。ジャッジは新人王だったので、別部門での受賞の影響でイレギュラーな結果になったと推測できる。

現在の大谷のfWARはというと、7・3でやはり両リーグトップ。ただゲレロもア・リーグ2位の6・5とハイペースで追い上げている。シーズン終了時点でこの差がどうなるのか、注目したい。(WARの数字は日本時間9月18日現在)

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)