マー君はやっぱり負けなかった。今年からメジャー担当となり、取材した登板2試合で2勝した。13年、楽天担当として見届けたシーズン24連勝から、勝ち続けている。ニューヨークでの日本人対決は日米から注目を集めていたが、周囲の騒々しさをよそに、田中は淡々と投げていた。

 田中将大と大谷翔平-。メジャーに挑戦し続ける2人に際だっているのは、「動じない冷静さ」だと感じる。大谷を例に挙げれば、チームメートから「あんなに多く注目されているのに、いつもリラックスしている」と、よく言われる。試合中でも無邪気な笑顔が多く見られる。この日だってそう。9回、チャプマンから四球を選ぶと、塁上でそんな表情を見せた。

 13年当時の話だが、果てしなく続いていた連勝記録の中、田中からよく聞いた言葉がある。「やれることをやるだけです」。自然体で自分の出来ることを全うしていた。田中は6回、3番シモンズにソロ本塁打を打たれた。流れが変わりそうだった場面で、続く大谷を事もなく空振り三振に打ち取った。やはり落ち着いている。そんな印象だった。

 田中は名門ヤンキースに7年総額推定162億7500万円(※金額は当時)で移籍した。一方で大谷はメジャーではベーブ・ルース以来の「二刀流」に挑戦している。両者とも結果を出せなければ容赦なくメディアからたたかれる立場だが、その中で動じることなくプレーしている。

 今回のニューヨーク遠征で田中にあいさつに出向くと、言われた。「あっち、行っていいですから」。そっぽを向かれた。自分は動じてしまい、何も言い返せなかった。【MLB担当 斎藤庸裕】