レンジャーズのダルビッシュ有に続き、メッツの24歳右腕ザック・ウィーラーが、「トミー・ジョン手術」と呼ばれる腱(けん)移植手術を受けることになり、米球界では、またしても故障防止への論議が高まってきました。もはや、とどまることのない「故障渦」に、先発ローテーション6人制が、本格的に導入される可能性が、一気に高まってきました。

 すでにヤンキースは、期間限定とはいえ、先発を6人で回す方針を固めています。昨季途中、右膝を手術したエース左腕サバシア、右肘靱帯(じんたい)部分断裂で離脱した田中らへの不安もあり、長期連戦の期間は「中5日」を確保する目的で、先発6人制にすると見られています。ジラルディ監督も「その件については、みんなで真剣に議論している。もちろん、シーズンを通してやるわけではないが」と、前向きな姿勢を見せています。実際、オープン戦の期間中には、昨年まで救援だったウォーレン、ロジャースらを先発として起用するなど、「6番手」候補のテストを続けています。ヤンキース以外でも、若手の剛球投手を抱えるナショナルズやメッツなど、複数の球団が「6人制」を検討していると言われています。

 かつて1970年代のメジャーでは、先発4人制で「中3日」が主流でした。それ以前は3人制だった時代もあるわけで、時を経て徐々に変わってきた歴史があります。トレーニングや治療法、登板後のケアなどが科学化されてきた一方で、相次ぐ「故障渦」の理由は、明確になっていません。多種多様な変化球の増加、筋トレに伴う速球のスピード増など、肩、ヒジへの負担増の原因を指摘する見解もあります。その一方で、「休養」や「回復」への意識が高まっているのも事実です。

 もし6人制が定着すれば、年間を通してプレーする投手の先発回数は、単純計算でこれまでの32試合から27試合前後に減ることになります。となると、成績や年俸にも影響を与えることになります。さらに、先発陣のレベル低下につながる可能性もあります。

 今後しばらくは、各球団が試行錯誤を繰り返すことになるでしょう。故障防止のための多様な論議を含め、米球界は「過渡期」を迎えています。