日米通算でピート・ローズの「4256安打」を抜いたイチローが、今度はメジャー通算3000安打に近づき、注目されています。その一方で、米国、中南米、日本、台湾と国際色豊かなマーリンズ担当記者の間では、ひそかにウェイン・チェン投手(30=元中日)の記録? も話題を集めています。

 「イチローの3000本安打と、チェンのメジャー初安打は、どちらが先に達成されるか」。

 メジャー5年目を迎えたチェンは、依然としてメジャーで安打を放っていません。オリオールズに所属していた昨季まではDH制だったこともあり、4年間通算でも交流戦だけの7打席と、機会が少なかったのですが、マーリンズへ移籍した今季は先発のたびに打席へ向かいます。ところが、なかなか結果が伴わない日々が続いているのです。

 23日(日本時間24日)のカブス戦でも3打数無安打に終わり、次戦以降へ持ち越しになりました。

 この結果、メジャー通算の打撃成績は、35打数無安打14三振。

 おまけに、四死球もなく、打率だけでなく、出塁率も0割と、打撃成績の欄にはなんとも寂しい数字が並んでいます。

 実は、4月30日のブルワーズ戦で、「遊撃内野安打」を記録したことがありました。一塁ベースに到達したチェンや、マーリンズベンチは大いに盛り上がり、記念ボールまで戻ってきたのですが、そんな事情を知るはずもない公式記録員が、試合中に「遊撃失策」へと訂正。「幻の初安打」になってしまいました。

 中日時代の5年間にしても、通算打率は8分4厘と1割に届いておらず、もともと打撃は苦手でした。とはいえ、投手も「9人目の野手」として攻撃に参加するわけですし、自分の投球を助けることも可能です。悩んだ末に? 左腕チェンは少年時代の「右打ち」にスイッチ。過去数試合は、右打席で初安打を目指しています。

 世界で最も多くの安打を放ってきたイチローでさえ、「ヒットを打つことは、常に難しい」と言い続けるくらいですから、チェン自身が深く気にしているわけでもありません。メジャー初安打もうれしいでしょうが、本職の投球で白星を重ねる方が、何倍もの充実感を得られることは言うまでもありません。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)