メジャーの公式戦はオールスターを挟み、7月15日(日本時間16日)から後半戦がスタートします。開幕前から注目を集めたドジャース前田健太投手は、球宴前まで8勝6敗、防御率2・95の好成績で折り返しました。契約当時は、右肘の故障を心配する声もありましたが、開幕から先発ローテーションを守り、投球回数も103回2/3と、不安説を一掃する投球を続けています。

 不慣れなメジャー1年目でもあり、多種多様な対応や工夫があったことは言うまでもありませんが、その一方で、古巣広島の戦いぶりに背中を押されている側面も、大いにあるようです。開幕前は「お互いに刺激し合えれば」と謙虚に話していましたが、今季のカープは大躍進。オールスター前の時点で、2位巨人に10ゲーム差をつけるなど、エース前田が抜けた穴を感じさせないどころか、ベテランと伸び盛りの若手が見事にかみ合って、白星を重ねています。

 そんな古巣の絶好調ぶりを、前田は「もう刺激はいらないかなと(笑い)。快進撃で独走しているので、僕から刺激を受けることはないと思います」と、元チームメートというよりも、ファンと同じような気持ちで喜んでいます。前田自身、07年の入団以来、クライマックスシリーズの経験はあっても、日本一とは無縁でした。だからこそ、優勝を身近に感じ始めた選手の気持ちや、地元広島のファンの盛り上がりも想像できるのでしょう。

 今現在は、ドジャースにとって欠かすことのできない先発ローテの柱の1人。左腕カーショーが故障離脱していることもあり、前田の登板試合は勝利を計算されるほど、重要な立場になっています。「しっかりといい投球をしたいと思いますし、みんな“見てるよ”ってメールをくれるので、そういう意味ではいい投球を見せたいですし、僕も負けないように頑張りたいと思います」。前半戦を終えたドジャースは、首位ジャイアンツに6・5ゲーム差の地区2位。4年連続地区優勝に手の届く位置に付けています。

 広島にすれば1984年以来32年ぶりの日本一、一方のドジャースにとっては1988年以来28年ぶりとなる世界一。

 シーズンの最後まで、前田と広島の「刺激的な戦い」は続きそうです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)