カブスからFA(フリーエージェント)になっていた川崎宗則選手が、今季もカ軍に残留することが決まりました。米移籍6年目を迎えますが、マイナー契約からスタートする貪欲な姿勢は、36歳となる今季も変わっていません。

 結果的に、過去5年間と同じ立場なのですが、その厳しさは周囲が考えるほど生半可なものではありません。メジャーとマイナーを行き来するだけでも大変ですが、なおかつ結果を求められます。たとえ結果を残しても、球団側がプロテクトしたい若い選手の契約を優先させる場合は、非情の通告を受けることも頻繁です。そんな環境を承知したうえで、カ軍残留を決断したのですから、川崎の覚悟は相当なものです。

 昨季の川崎は開幕直後に緊急昇格したものの、すぐにマイナー行きを通告されるなど、3Aアイオワでの生活が大半を占めました。メジャーでは、13試合に出場し、21打数7安打(打率3割3分3厘)と、公式戦での出場機会は限られました。それでも、ポストシーズンではロースターから外れながらも緊急時の交代要員として最後まてチームに同行し、世界一の美酒を浴びました。持ち前の明るさでチームに溶け込んだだけでなく、練習に取り組む姿勢など、若い選手の「手本」として高く評価されていた証しが、チャンピオンリングでした。

 その一方で、シャンパンファイトの際には、今後の去就について「また(マイナー生活で)5時間のバス移動をできるか…」と、本音もこぼしていました。常に前向きな川崎といえども、先の見えないマイナー生活期間中には、さすがにヘコんだ時期があったそうで、日本球界復帰が脳裏をちらつくことも、1度や2度ではなかったようです。

 契約内容は、昨季と同様にメジャーに昇格すると年俸90万ドル(約1億500万円)となるスプリット契約と見られており、日本復帰の方が好条件だったはずです。それでも、世界一の感激を味わった川崎は、連覇を目指して、今季も米国にプレーの場を求める覚悟を決めました。

 今季のカ軍にはレッドソックスから移籍した上原もいます。2人とも闘志を前面に出すムードメーカー。カ軍の試合後、川崎と上原の2人が交わすハイタッチは、かなり激しいものになるような気がします。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)