WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)が米国、メキシコでも開幕し、各地で激しい試合が繰り広げられています。大会史上初のタイブレークの激戦となった2次ラウンドの「日本-オランダ」をはじめ、しびれるような戦いが続いていますが、米フロリダ州マイアミで行われたC組では、伏兵コロンビアの戦いぶりが、注目を集めました。

 南米コロンビアといえば、2014年ブラジルW杯で日本を破り、ベスト8に入ったようにサッカーの強豪国。野球としては途上国でもあり、初めて予選から勝ち上がり、本大会へ出場した今大会も、開幕前は「格下」として見られていました。ところが、1次ラウンドでの戦いは、周囲を驚かせる「旋風」と言ってもいいほど見事でした。

 今回のチームは、キンタナ(ホワイトソックス)、タラン(ブレーブス)の両先発を除けば、ほとんどがマイナー級。他国がほぼノーマークだったのも、ある意味で当然でした。

 ところが、初戦の米国戦では、6回まで2-0とリード。最後は延長10回裏、サヨナラ負けを喫しましたが、翌日のカナダ戦では4-1で大会初勝利を挙げました。さらに、前回覇者ドミニカ共和国戦では、8回裏に3-3の同点に追い付き、9回裏1死一、三塁と、王者を土俵際まで追い詰めました。結果的に、タイブレークで敗れましたが、強豪国を苦しめた戦いぶりは、3000安打の重鎮解説者でなくとも「アッパレ」と言いたくなるような印象を残しました。大砲や剛球投手は不在でも、細かなデータに基づいた堅い守備、コンパクトにつなぐ打撃をベースにする堅実なスタイル。実際、米国リーランド監督は「コロンビアには脱帽した。信じられないほどで、エネルギーあふれるプレーだった」と、賛辞の言葉を惜しみませんでした。

 同国のプロリーグは、各地の4チームで、開催期間は毎年11月から1月までの3カ月間。現行の方法で20年以上継続している一方で、集客、スポンサーによる資金面を含め、運営上、決して良好とは言えないそうです。ドミニカ共和国に敗れ、1次ラウンド敗退が決まった直後、ウルエタ監督は涙交じりに振り返りました。「世界中を驚かせるまで、あと90フィート(約27メートル=塁間)足りなかった。望んでいた結果ではなかったが、いろいろなことを示すことができた。そのことはハッピーだし、満足している」。今回の大躍進が、コロンビア国内で野球熱が高まるキッカケになるとすれば…。

 それこそが、WBC開催の本当の価値、意義のような気がします。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)