ワールドシリーズ進出をかけたリーグ優勝決定戦が始まりました。ナ・リーグは、昨年と同じ「ドジャース-カブス」の顔合わせとなりました。昨季は、カブスが4勝2敗で突破し、Wシリーズではインディアンスとの激戦を制し、108年ぶりの世界一に上り詰めました。

 ただし、今回は少しばかり状況が違います。昨年はカブスが公式戦でメジャー最多の103勝を挙げていたのに対し、今季はドジャースが最多の104勝。両チームの対戦成績も、ドジャースが本拠地で3連勝するなど、4勝2敗と勝ち越したこともあり、下馬評ではド軍有利の声がチラホラと聞こえてきます。

 しかも、地区シリーズを3連勝で突破し、4日間の休養を挟んだドジャースに対し、カブスは超ハードな日程をこなしてきました。ナショナルズ相手に、先に王手をかけながら第4戦が雨天順延となり、ナ軍の先発ローテが変更。登板可能となった快速右腕ストラスバーグを攻略できず、逆王手をかけられたあげく、移動日なしで敵地で第5戦に挑みました。試合は、カ軍が先発陣3人を投入する総力戦となり、ポストシーズン史上、9イニングでは最長となる4時間37分の激闘の末、カ軍が今シリーズにコマを進めました。

 ハプニングは、さらに続きました。敵地でのシャンパンファイトを終えた13日未明、ワシントンDCからロサンゼルスへチャーター機で出発したところ、同行中の家族に急病人が出たため、ニューメキシコ州アルバカーキに緊急着陸することになりました。その際、チャーター機の機長が労務規定の就業時間を超過したため、急きょ交代することになり、同地で5時間待ちぼうけ。結局、計10時間の長距離移動を強いられることになってしまったのです。

 本来であれば、到着後、軽く練習するほか、先発投手らの公式会見が行われるはずでしたが、球場に姿を見せたのはマドン監督だけでした。そのマドン監督にしても、ホテルへ戻り、GMらとのミーティングを終えると、翌朝まで10時間も眠ったそうです。

 つかの間の休息を取ったとはいえ、カ軍選手のコンディションが100%のはずはありません。

 ただ、マドン監督は、大事な試合へ臨む以前に、選手の言動にも目を向けていました。

 「うちの連中をとても誇らしく思う。だれ1人として不満を言わなかったし、みんなが親身になる時間だった。全員が状況を理解していた。1人の人間として、他人のことを心配していたんだ」。

 チームの結束力を語る名将マドン監督の口調が、自信めいて聞こえたのは、おそらく気のせいではないはずです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)