昨季までマリナーズで活躍した岩隈久志が、今季は巨人のユニホーム姿で8年ぶりに日本球界へ復帰することになりました。米ロサンゼルス郊外で自主トレ中の岩隈は、過去数年間、故障で苦しんだこともあり、いつも以上に明るい表情でシーズンへの意気込みを語りました。

「日本の野球をまた勉強するというか、選手も変わってきてると思うので、いろいろと研究しながら投げたいなと思っています」

今回の岩隈のみならず、メジャーで経験を積み、再び日本球界にプレー機会を求めるケースは、近年、頻繁になってきました。

かつて、パイオニアの野茂英雄がメジャーへの扉を開けた際、これほど多くの選手が日米両球界を行き来することをイメージできる人は、おそらく限られていたのではないでしょうか。当時、メジャー挑戦は退路を断った日本球界との「決別」であり、極端な言い方をすれば「裏切り者」とみられるような雰囲気すら漂っていました。選手心理からすれば、米国に骨をうずめる覚悟で太平洋を渡るような時代でした。

その後、メジャーへ挑戦することは、選手にとって手の届かない「夢」ではなく、具体的な「目標」に変わってきました。今オフ、マリナーズ入りした菊池雄星、エンゼルス大谷翔平らは、高校卒業時にメジャー入りを熱望するなど、メジャーとの距離は着実に変わってきました。

ただ、選手の思考、球界全体の風潮が変化した一方で、移籍システム自体はさほど変わっていません。海外フリーエージェント(FA)権を取得するまでには9年、それ以前であればポスティング制度を利用するしかありません。そのポスティング制度にしても、これまで何度となく規約が修正され、入札、譲渡金の規定も目まぐるしく変わってきました。

昨年、中学を卒業した直後の16歳、結城海斗投手がロイヤルズとマイナー契約を交わしたように、プロアマを問わず、今後も米国志向は強くなるはずです。確かに、優秀な人材が流出すれば、日本球界として一時的には危機感を感じるかもしれませんが、選手が海外で実績を積み、最終的にそれらの経験を日本に広めるようになれば、必ず発展につながるはずです。

昨季、復活した中日松坂が大人気を集めたように、元メジャーリーガーの存在感は、日本のファンにとっても別格です。昨年、メジャーを経験した指導者としてロッテに井口監督が就任しました。戦術、戦略面だけでなく、トレーニング法、施設面、ファンサービスなど、米国に学ぶ部分が、まだまだ多いことは間違いありません。将来的には、今現在、メジャーでプレーしているダルビッシュ、田中らが日本球界に復帰する可能性もゼロではありません。

今年で終わる平成の約30年間は、日米両球界にとっても、大きな変化をもたらした時代でした。新しい時代へ向けて、より多くの選手がメジャーへ挑戦できるようになるためにも、今後はFA権取得年数の短縮をはじめ、「田沢ルール」の撤廃など、今1度、球界全体の在り方、細かい制度を考え直す時期に来ているような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)