イチローの引退試合となった21日、ベンチへ引き揚げてきたイチローと抱擁を交わした際、マリナーズ菊池雄星投手(27)が流した大粒の涙は、米国のネット上でも話題を集めました。もらい泣きしたファンも多かったようですが、イチロー自身は実にケロリとしていました。

イチロー「いやあ、号泣中の号泣でしょ、あいつ。びっくりしましたよ。それ見て、こっちはちょっと笑けましたけどね」

メジャーデビュー戦だった菊池は、イチロー引退の一報を試合中に知ったそうです。一瞬、耳を疑ったものの、現実でした。8回裏、1度は右翼の守備に就いたイチローがスタンドに手をかざしながら戻って来る姿を見た途端、必死にこらえていた涙腺が決壊したそうです。

菊池「最初で最後のイチローさんとの試合でしたし、ホントに終わってしまうんだ、これが最後なんだという気持ちが、どんどんライトからイチローさんがベンチに向かって来るに従って、そういう気持ちが強くなって、思わず泣いてしまったんです」

キャンプイン以来、わずか2カ月足らずの短い期間でしたが、2人の師弟関係は、日増しに強くなっていました。イチローと一緒にグラウンドに立つことを「幸せな時間」と感じる菊池は、いつも笑顔で師の姿を追い続けていました。そんな少年のような菊池の純粋さは、イチローにも伝わっていました。

イチロー「こんなにいい子いるのかなっていう感じですよ、ここまで。今日まで」

その一方で、キャンプ地アリゾナから日本へ移動した際の珍エピソードを、イチローが会見で明かしました。チームのドレスコードを確認し合うやりとりを、自ら再現してくれました。

イチロー「服装のルールが黒のセットアップ、ジャージーのセットアップでOK。長旅なので、できるだけ楽にという配慮ですけど、『雄星、俺たちどうする?』って。『アリゾナをたつときはいいんだけれども、日本に着いた時、さすがにジャージーはダメだろ』って2人で話していたんですね。『そうですよね、イチローさん、どうするんですか?』って。僕は『中はTシャツだけどセットアップでジャケット着ているようにしようかな』って。『じゃあ僕もそうします』と雄星が言うんです」

ところが、羽田に到着した際、打ち合わせ通りにジャケット姿だったイチローに対し、菊池はなんと機内と同じ黒のジャージー姿で降り立ちました。

イチロー「いや、コイツ大物だな、と思って。ぶったまげました。本人にまだ真相は聞いてないんですけど、何があったのか分からないですけど、左投手はやっぱ変わったヤツ多いなと思ったんですね。でも、スケール感は出てました。頑張ってほしいです」

後日、真相を聞かれた菊池は、かなり恥ずかしそうに答えてくれました。

菊池「それを話すと10分くらいに…。のちほどゆっくり…。完全に僕のミスです」

今回のジャージー姿はともかく、今後はスケール感たっぷりの投球で、イチロー先輩をぶったまげさせてほしいものです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

21日、アスレチックス対マリナーズ 8回裏開始前に交代を告げられベンチに引き揚げたマリナーズ・イチロー(手前)と抱き合う菊池
21日、アスレチックス対マリナーズ 8回裏開始前に交代を告げられベンチに引き揚げたマリナーズ・イチロー(手前)と抱き合う菊池