ロックアウト(業務停止)が続くMLBで、オーナー陣と選手会との新労使協定を巡る折衝がようやく再開されましたが、またしても物別れに終わりました。事前に予想されたことでしたが、ぜいたく税の対象となる球団総年俸、FA(フリーエージェント)の取得期間短縮などの争点をはじめ、双方の主張には依然として大きな隔たりがあるものとみられています。

その一方で、ユニバーサルDHの導入については、合意の方向で進んでいると伝えられています。もし、正式決定となれば、今季からは両リーグでDHが採用されることになります。

となると、エンゼルス大谷翔平投手の打席数が増える可能性が高まりそうです。昨季は「リアル二刀流」を含め、投打に大活躍しましたが、DHのない敵地での交流戦では、代打待機のため、ベンチスタートが大半でした。今季のエンゼルスは、敵地での交流戦が計10試合予定されており、その全試合にDHで出場するとすれば、単純計算で40打席ほど増えることになりそうで、本塁打数が増えるチャンスも膨らみます。

実際、昨季48本塁打で初タイトルを獲得したウラジミール・ゲレロJr(ブルージェイズ)と大谷の間には、59打席の差がありました。あくまでも机上の計算ですが、約13・9打席に1本塁打を放つ大谷に40打席が増えるとすれば、3本塁打が加算されることになり、大谷が本塁打王になっていた可能性もあります。

また、パイレーツに残留が決まった筒香嘉智にとっても、出場機会が広がることになりそうです。現時点では、主に一塁手や外野手として期待されていますが、DH枠が加われば、プレー機会はさらに増加するはずです。

もし、両リーグでDH採用となれば、大谷や筒香のような打者だけでなく、「できることなら打席に立ちたくない」と公言しているパドレスのダルビッシュ有投手にとっても朗報になるでしょう。かねて「34歳以上の選手は、DHを選択できるようにしてほしい」と、ジョーク交じりに話していたほどで、ダルビッシュだけでなく、投手専念を望んでいる選手がいるのも事実です。

両リーグでDH採用となれば、ナ・リーグの野球の質も変わっていくのかもしれません。打撃のいい投手が試合の流れを変えることもありますが、球界内では打つ気のない投手が打席に立つことに違和感を覚える意見も高まっています。もちろん、依然として賛否両論ですが、これも時代の流れ、ということなのでしょうか。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)