ウェーバーを経ずにトレードできる期限が31日に迫り、今年もMLB各チームの間でトレードが数多く行われている。その中でも現地29日までで最も注目されているのがロッキーズとブルージェイズによる複数人交換トレードだろう。ロッキーズがトロイ・トロウィツキー遊撃手を、ブルージェイズがホセ・レイエス遊撃手を出したのである。

 トロウィツキーは通算打率2割9分9厘、188本塁打、660打点、今季も3割5厘、13本塁打、49打点という強打者だ。オールスターに5度、ゴールドグラブ賞に2度選ばれ、これまでロッキーズにルーキーから10年在籍してきたまさにチームの顔といえる存在だったのである。一方レイエスも通算打率が2割9分1厘、471盗塁、今季2割8分5厘、17盗塁。2011年の首位打者で、盗塁王を3度獲得しており、実績は十分といえるだろう。

 注目されているのはスター選手の交換というだけではない、特にブルージェイズにとって大きな賭けだと見られているためだ。まずなぜ強打者を獲得したのか、という点だ。現在ア・リーグ東地区4位にいるブルージェイズは打高投低のチームであり、補強するのは先発を含む投手陣という見方が強かったのである。

 ブルージェイズは今季総得点が530で、2位ヤンキースの477を大きく引き離してア・リーグぶっちぎりのトップなのだ。そこにトロウィツキーが加われば、超強力打線にはなるのはたしかだが。

 今回のトレードでブルージェイズはラトロイ・ホーキンス投手も得ているが、通算74勝126セーブのホーキンスは救援投手であり、さらに42歳とブルージェイズの投手陣の穴を埋めたとは考えにくい。

 さらに契約の問題もある。トロウィツキーには2020年まで総額1億ドルの契約が残っている。対してレイエスは2017年までで6600万ドルだった。中長期的に見てもより財政的に厳しい選択なのである。

 これら以上に大きかったのはチームへの衝撃かもしれない。地元紙デンバー・ポストなどの報道によれば、トロウィツキーはチーム・オーナーから事前にトレード候補となることを伝えられ承諾していたということだ。しかしトレード決定は27日、カブス戦の9回途中に、涙を目にためたウォルト・ワイス監督によって伝えられたということである。その後チーム内はショックと陰鬱な雰囲気で包まれたのだとか。

 さらにトロウィツキー自身がトレードについて「蚊帳の外に置かれていた」と語り、さらにDJルメイユ二塁手が「がっかりした」と不満を述べるなど、まだ波紋は続いている。地元ファンにもショックだったのは間違いない。

 こうして見るとトレードはまさに勝負の一つなのだということを改めて思い知らされるばかりである。