アメリカでの相次ぐ警察官による黒人射殺事件に起因する事件や抗議デモなどの余波が12日に行われたMLBオールスターゲームにも及んでしまった。試合前にカナダ国歌を斉唱したグループのメンバーが騒動に関係する言葉を勝手に付け加えて歌ったのだ。

 このゲームでカナダ国歌を担当したのはカナダの4人組ボーカル・グループ、ザ・テナーズ。その一人レミジオ・ぺレイラが「我らは皆兄弟姉妹、偉大なるお方の前では命は全て大切」と歌ったのである。問題となったのは「命は全て大切」(All Lives Matter)という部分で、このフレーズは黒人射殺に対する抗議活動で使われている”Black Lives Matter”(黒人の命も大切)というフレーズへの対抗の意味で使われているものなのだ。しかもペレイラは歌ったときこのフレーズを手書きしたカードを取り出し、掲げている。

 このカナダ国歌斉唱のシーンはアメリカ国内向けテレビ中継では放送されなかったということだが、スタジアムは騒然となり、すぐさまソーシャルメディアで拡散され、非難の嵐を生むことになってしまった。

 この歌詞改変はペレイラが独断で行ったようで、ビデオを見るとペレイラがフレーズを加えて歌ったことに隣のメンバーが驚く様子が映っている。

 ザ・テナーズはこの騒動を受け、公式サイトとフェイスブックで声明を出し、ペレイラの行為は「無礼で間違った」ことであり、「一匹狼」な行為と呼んで謝罪した。さらに「残りのメンバーは、レミジオ・ペレイラの行動にショックを受け、困惑しています。ペレイラは我々の宝である国歌を改え、この栄えある舞台を自身の政治観を表明する場として利用しました。我々は真摯にこの恥ずべき行動を見た全ての人々、カナダ人、MLB、友達、家族、ファン、そして全ての関係者に謝罪し、後悔しています」としたうえで、ペレイラの活動停止を表明している。

 アメリカを揺るがしている事態がこんなところでこんな形で及ぶとは、と深く考えさせられる一件となった。