前回、自身が持つMLB最速記録に並ぶ速球を投じたことを紹介したばかりのアロルディス・チャップマン投手が現地25日、ヤンキースからカブスにトレードされた。カブスからはアダム・ウォーレン投手と若手3選手が交換で出されている。ウェーバー公示なしのトレード期限が8月1日に迫り、各チームでトレードの動きが活発化する中でヤンキースとカブス、双方の思惑が合致したようだ。

 まずヤンキースだが、27日現在ア・リーグ東地区で首位オリオールズから6・5ゲーム離され4位。ワイルドカード争いでも5位と、プレーオフ進出は苦しい状況にある。こうした時、プレーオフを断念し来シーズン以降のチーム再建のためのトレードを行うチームは多い。

 実際、今回のトレードでもそうした考えが垣間見える。それは獲得した若手選手の一人がグレイバー・トーレス遊撃手だったからだ。まだベネズエラ出身でまだ19歳のトーレスはメジャー・デビューを果たしていないが、ベースボール・アメリカ誌有望選手ランキングで27位に入っているほど将来を有望視されている選手なのだ。引退したデレク・ジーター氏に代わるスター選手として育てようという意思が感じられるのである。

 一方で、今回のトレードについてブライアン・キャッシュマンGMは、「白旗を挙げたわけではない」とも語っている。それは今シーズン20セーブを挙げているチャップマンは放出したものの、昨年36セーブを挙げ最優秀救援投手賞を受賞したアンドリュー・ミラーが6勝1敗9セーブと好調だからだ。

 さらに昨年までヤンキースに在籍し、先発も中継ぎも任せられるウォーレンを獲得したことでブルペンがむしろ充実するという考えだろう。

 対してカブスの方針は明白だ。カブスはナ・リーグ中地区で2位に6・5ゲーム差をつけ独走している。左腕でMLB最速投手であるチャップマンを獲得することでワールドシリーズ進出に向け、チーム力を確固たるものにしたいのである。なにしろ今シーズンのチャップマンが投じた速球の平均球速はMLBでただ一人100マイル(約161km)に達しているのだ。

 若手で将来も見つつ、プレーオフもあきらめないというこのヤンキース、鬼に金棒といった感じのカブス、それぞれのトレード策の結果はどうなることであろうか。