まったくなんというワールドシリーズだったのだろう。71年ぶりのシリーズ進出を果たしたカブスが1勝3敗と後のない状況から2連勝し、現地2日に行われた第7戦に持ち込む展開となった。

 最終決戦の第7戦も初回にカブスが1点を先制したものの3回にインディアンスが追いつき、さらにカブスが一時は6対3までリードを広げた。これで決着するかと思われたが、8回裏、満を持して投入したカブスの守護神アロルディス・チャプマン投手がまさかの連打を浴び、再び同点とされ、延長に突入してしまう。そして10回表、1死一、二塁で5番のベン・ゾブリストがこの日初ヒットとなる2塁打を放ち、2点を挙げこれが決勝点となった。インディアンスも10回裏に1点を返す粘りを見せたが追いつけず、カブスは108年ぶりの王座を手に入れたのである。

 このゲームの勝利で特に注目したいのが、延長に入る直前に起こった降雨による17分間の中断だ。カブスのクリス・ブライアント三塁手がフォックス・テレビに語ったところによれば、この時スタジアム内のウエート・ルームで選手だけのミーティングが行われたのだという。

 ブライアントは「我々にとって最も良かった。皆でウエート・ルームに集まったんだ。お互いに支えあった。(チャプマンは)少し動揺していた。ジェイソン・ヘイワードが先導して、気分を高めてくれて、やる気を出させたんだ」と話している。

 ヘイワード右翼手は話した内容について「自分はただ自分たちに自信を持て。勝ち負けを気にするな」と語っただけだと謙遜していたが、この演説が2度も追いつかれ嫌なムードになりがちなチームの雰囲気を変えたであろうことは確実だ。勝因となったといえるかもしれない。

 前回、2つの「呪い」を持つカブスと68年ぶりの優勝を狙うインディアンスという今回のシリーズのテレビ中継には放送、広告業界から大きな期待がかけられているということを紹介したが、その期待はかなえられたようだ。第1戦から高視聴率が続いたのである。

 特に注目されたのがカブスが3対2で71年ぶりに本拠地でのシリーズ勝利を手にした第5戦だった。調査会社ニールセンによれば、実に総視聴者数は2150万人に上ったという。これはほぼ同時刻に行われたプロフットボールNFLのサンデーナイト・フットボールの1720万人を上回るものだった。

 さらに第7戦は視聴率25・2%、総視聴者数は4000万人に達し、ここ25年間で最高を記録したということだ。

 本当にすごいワールドシリーズであったことが改めてわかる数字だといえよう。