年が明けてアメリカのメディアを中心にMLB関連で話題となっているのが、18日に発表される野球殿堂入りについてだ。殿堂入りは全米野球記者協会に10年以上在籍した記者による投票で75%以上の得票が必要となっている。スポーツマンシップや品格も投票基準の一つとなっており、そのため実績はあっても不祥事などでイメージの悪い元選手は殿堂入りができない例も多い。賭博に関与したとされる元レッズのピート・ローズ氏がその代表だろう。

 そんななか薬物使用疑惑のある元選手について殿堂入りの可能性が出てきていると伝えたのが、2日付のニューヨークタイムズ電子版だ。「殿堂投票者がステロイド時代のスターに対する態度を軟化」という記事を掲載したのである。

 記事では歴代最多の通算762本塁打を放ったバリー・ボンズ氏、通算354勝のロジャー・クレメンス氏という歴史に残る活躍をしながらも薬物使用疑惑が原因で殿堂入りしていない両氏の可能性が高まっているのではと指摘している。

 90年代後半までは薬物規制が厳格でなく、筋肉増強剤の使用が蔓延していたこともあって、特に90年代はステロイド時代とまで言われ厳しい目が注がれてきた。しかし記者の若年化もあって意識に変化が見られるというのだ。

 またまさにステロイド時代にリーダーだったバド・セリグ前コミッショナーの殿堂入りが決まったことも挙げ、選手だけが厳しい扱いを受けるのはどうか、という意見も紹介している。

 実際、昨年の両氏への投票は一昨年から約8ポイント増の45%前後になったという経緯もある。一挙に殿堂入りは難しいかもしれないが近い将来75%に到達する日が来るかもしれない。

 その一方で、政治的な言動が問題視され殿堂入りできないだろうと自ら語ったのが、フィリーズなどで活躍し216勝、3116奪三振挙げたカート・シリング氏である。ゴシップサイトTMZのインタビューで、投票者を「自分が知る最悪の人間」と呼び、”性格条項”によって投票しないだろうと語ったというのだ。

 さらに「彼らは自分がソーシャルメディアで話したことを理由に投票しなかったということを隠してもいない。それが投票者の特権だ」とまで話している。

 シリング氏はツイッターやフェイスブックで人種・宗教差別や性的マイノリティを攻撃するような発言を繰り返し、昨年解説者を務めていたスポーツ専門局ESPNから解雇されている。さらに大統領選挙期間中にドナルド・トランプ時期大統領を支持し、ヒラリー・クリントン元候補を攻撃するような言動をとっていた。

 特にこのトランプ支持が問題視されていると感じているようで、「トランプ氏をリンチする」発言をしていたら90%の得票を得ただろうとも発言したとのことだ。

 薬物使用疑惑や政治的言動などさまざまな要素が投票に影響することはある意味しかたないようにも感じられる。と同時にその基準は時代によって変化するの事実だろう。それが議論されることはいいことかもしれない。まずは今年の投票結果がどうなるかに注目しよう。