引退を発表したばかりのカルロス・ベルトラン元外野手がヤンキースの監督候補に上るのでは、という噂が注目されている。

 プエルトリコ出身のベルトランは98年にロイヤルズでメジャーデビューを果たすと攻守に秀でた選手として活躍してきた。2004年にアストロズにトレードされて以降はメッツやヤンキースなど6チームを渡り歩き、その間に9回のオールスター選出、3回のゴールドグラブ賞、2回のシルバースラッガー賞を受賞している。そして今シーズンは1年1600万ドルの契約でアストロズに復帰し、念願のワールドシリーズ・チャンピオンに輝いていた。

 そんなベルトランは13日、スポーツ選手が自ら情報発信できるウェブマガジン、ザ・プレーヤーズ・トリビューンに”Muchas gracias, b・isbol”(スペイン語で、ありがとう、野球)という記事を掲載し、現役からの引退を発表したのである。記事ではこれまでの選手生活が感傷的に語られ、最後にチャンピオンになれたことや友人やチームへの感謝が述べられた後、正式に引退を発表、最後は「次の章を待つことはできない」という言葉で締めくくられている。

 そして新たな監督を探しているのがヤンキースだ。10年間監督を務めてきたジョー・ジラルディ氏はリーグ優勝シリーズでアストロズに敗れた後解雇された。ブライアン・キャッシュマン・ゼネラルマネジャーは期限を決めず幅広い候補者と面談する計画であることを公言している。

 この二つの件が重ねられてベルトランの”次の章”がヤンキースの監督になる可能性があるのでは囁かれ始めたのだ。実際、ベルトラン自身この件をスポーツ専門局ESPNから質問され「全てを考慮する必要がある。それは素晴らしい仕事で、信じられないようなインパクトのある役職だ」と語るとともに、もし面談の機会を与えられたら、それを排除しない、と関心があることを明らかにしている。

 とはいえ引退したばかりのベルトランに監督が務まるのか、と思うのも確かだ。しかしベルトランが40歳と若く、これまでも他の選手のメンター的立場であったことを理由に可能性はあるという指摘もある。まずジラルディ前監督解任の理由がクラブハウス内での選手たちとの関係性とコミュニケーションレベルにあったことが挙げられている。

 これに対し、ベルトランは先の記事で「私が年を取るにつれて、若い男たちがアドバイスを求めてきた選手になったので、私はこの試合の目的がホームランを打つだけでなく、チャンピオンシップを獲得することだけではないということを理解し始めた」「それは、他の多くの選手が私のためにやったように、私が知っているものを私の若い選手たちと分かち合うことだ。ベースボールの試合に戻すことだ」と述べ、リーグ優勝シリーズ後選手たちが緊張していると感じ自らチームミーティングを開き、リラックスさせたことを紹介している。こうしたことから今のヤンキースが必要としているものと合致しているというのだ。

 既にヤンキースは元マリナーズ監督のエリック・ウェッジ氏など2人の候補者と面談し、さらに元ヤンキース三塁手のアーロン・ブーン氏との面談も予定している。まずはベルトランが実際に面談に至るかが次章が開かれるかの第一ステップになるだろう。