MLBには“Unwritten Rules”(暗黙の掟、不文律)と呼ばれるものが存在していることを知っている方も多いのではないだろうか。

 その名のとおり、ルールブックには書かれていない選手が守るべきエチケットのようなものである。例えば、大量リードで一方的な展開になったゲームの後半に盗塁やバントをしてはいけない、走者がベンチに戻るときマウンドを横切っていけない、といったものがある。守らないと相手を挑発したと見なされ、チーム間で報復行為が行われたり、ときには乱闘に発展してしまう場合もあるのだ。

 そしてこの暗黙のルールに関する問題が19日のレンジャーズ対ブルージェイズ戦で起こった。ブルージェイズが2対0でリードした5回裏2アウト、走者なしの場面で打席に立ったブルージェイズのコルビー・ラスムス外野手がレンジャーズのコルビー・ルイス投手の1球目を3塁線にバントし、ルイスがこれをさばいて1塁に送球したものの、ラスムスはセーフになったのである。これに対し、ルイスは怒った表情でラスムスに何を話しかけるという行動に出た。

 なにが問題になったかというと、レンジャーズは左打者のラスムスに対し、1、2塁間に内野手を3人置き、2、3塁間には内野手は1人という、いわゆるシフトをしいていたのである。しかも2死だ。そんな状況でセーフティ・バントをするのはUnwritten Rulesに反するというのがルイスの怒りの原因なのである。

 MLB.comに掲載された記事によれば、ゲーム後ルイスは「(ラスムス)に嬉しくないと話した。2点リードの2死で、バントをした。そういうプレーをゲームでするものではないと思う」と話したということだ。さらに「彼はただ単に打率のためにバントをしたんだ」と怒りをあらわにしたのだとか。

 これに対し「自分はただチームを助けようとしているだけだ。彼がそれを嫌いだというなら、それは申し訳ないね。ただ自分は相手を喜ばせるためにここにいるんじゃない。自分のチームを助けるためにいるんだ。優位にたつことができる機会があっただけだよ」とルイスの怒りのわけが理解できない様子だったということである。

 実際のところ、極端なシフトに対して裏をかいてやる、という意識がとられた選手に生まれるのもわからないでもない。双方のプライドもあり、Unwritten Rulesは一概にこうと決められないところもある。なかなかに難しいだけに”書けない”のかもしれない。