19日、マーリンズがジアンカルロ・スタントン外野手と13年総額3億2500万ドルという契約を結んだ。この件は日本の一般メディアでも取り上げられるほど大きなニュースとして報じられている。総額としてはアメリカ・スポーツ史上最高額での契約であり、これほどの扱いを受けるのは当然だろう。

 ではこの契約は妥当なのか、という点ではアメリカでも議論があるようだが、納得という意見も多いようだ。まず今シーズンの成績を見てみるとナ・リーグ1位の37本塁打を放ち、打率2割8分8厘、105打点と活躍している。最優秀選手賞(MVP)投票で2位に入った。メジャー・デビューは2010年で、初年から22本塁打を打ち、以降それを下回ったことはない。通算5年で打率2割7分1厘、154本塁打、399打点となっている。

 最初のポイントはまだ5年、25歳という若さと、順調な成長ぶりだ。最近の大型契約で見ると2年前、やはりMLBを代表する強打者アルバート・プホールズ一塁手がエンゼルスと10年間2億4000万ドルで契約したことが思い出される。が、その時点でプホールズは32歳だった。

 これから確実にスーパースターになる選手への投資、という観点からするならば無茶な契約ではないと見ることができるのである。現ヤンキースのアレックス・ロドリゲス内野手が2001年にレンジャーズと10年総額2億5200万ドルで契約し、当時世間をあっと言わせたが、そのときロドリゲスはやはり25歳だったから、今回の状況は非常に近いといえるだろう。

 契約に対するもう一つの観点はマーリンズの人気だ。成績低迷が続くマーリンズの人気は同じく低迷している。2012年にオープンした本拠地マーリンズ・パーク人気もすでになくなっており、今シーズンの平均入場者数は2万1627人で、MLBで27位だった。さらに深刻なのはテレビの人気で、プライムタイムでの平均視聴世帯数は2万9000で、MLB最下位となっている。このこともあって、マーリンズが地元テレビ局と結んでいる放映権料もMLB最低の1300~1800万ドルと見られているのだ。

 そんな人気が低く、財政的にも厳しいチームにとって、躍進めざましいMLBトップクラスのスター選手をチームの顔として長く保有することはビジネス的にも大きな武器となるのである。

 と見てくると、たしかにうなずける契約であるといえるだろう。ただカンフル剤的な意味合いもあり、本当に成功するかどうかはこれから先何年も見ていかなければならないが。