【タンパ(米フロリダ州)2日(日本時間3日)=四竈衛】マー君、2年目は「メジャー式」で胸元をエグります-。ヤンキース田中将大投手(26)が、今キャンプ初めてフリー打撃に登板した。打者5人に対し各5球ずつ計25球、6スイングで安打性の当たりは1本だった。試運転の段階ながらも、左打者の内角へツーシームを投げ込み、「新兵器」の感触を確かめるなど、上々の調整ぶりを披露した。

 米国のフリー打撃といえば、主に投手の調整を目的とするため、実戦のような対戦感覚とは違う。それでも、ヤンキース田中はしっかりと打者の反応をテストしていた。左打者フローレスへの2球目だった。プレートの三塁側から鋭角に内角を突いた球筋が、鋭くシュートした。完全に腰を引かせたツーシームは、見逃しストライク。わずか1球だけでも、「使える」感覚は、指と体が感じていた。

 これまでもツーシームは投げていたが、右打者への内角が中心だった。だが、メジャーでは前ヤンキース黒田(現広島)をはじめ、左打者の内角に勝負球とする組み立てが主流。昨季、右肘痛で離脱したことを機に、復帰後2試合で試投するなど、今季用の武器として温めていた。

 昨年9月21日のブルージェイズ戦では、川崎を胸元へのツーシームで見逃し三振に封じた。「ヒントというか、黒田さんが投げられているのはよく見てましたけど、自分の中でもっと幅を広げたいというのがありました。そういうボールを使う投手は多いので、有効だと思います」。キャンプイン後のブルペン投球でも再三、練習を繰り返すなど、今キャンプのテーマの1つが、クロスファイアのツーシームだった。

 2年目の今季は、他球団の警戒心は一層、強くなる。細部まで研究され、昨季と同じパターンで勝ち星を稼げるほど、甘い世界ではない。「そこに頼り過ぎず、あくまでも意表を突く球。大事なときに一発で仕留められる、一発でいいところに投げられる準備はしておきたい」。新たなチャレンジができるのも、右肘をはじめ体調面に不安がない証し。今後の予定は発表されていないが、再度のフリー打撃を経て、オープン戦登板へ進む見込みだ。

 「徐々に試合レベルに近づいていると思う。そういう意味では順調だと思います」。田中の言葉は、投球と同様に、力強かった。

 ◆バックドアとフロントドア メジャーでは、打者の外角ストライクゾーンを外れたコースからストライクゾーンに入ってくる球をバックドアと呼び、スライダーやカットボール、カーブなど捕手のミットに入る直前に変化する球特有の動き。逆にフロントドアは、打者の内角を外れた体に近いコースからストライクゾーンに入っていく球をいう。例えばツインズ守護神の左腕パーキンスは右打者へのバックドアスライダーで有名。逆に右腕投手が左打者へのバックドアスライダーを武器にする場合もある。