マーリンズのイチロー外野手(41)が5回、日米通算1967度目の得点をマークし、王貞治(巨人)の日本プロ野球最多記録に並んだ。ナショナルズ戦に「7番左翼」で先発出場し、第2打席に遊撃内野安打で出塁。後続の適時打で同点のホームを踏んだ。チームは競り勝ち、今季初の3連勝。

 あと「1」への意識よりも、同点に追い付くことが重要だった。0-1と1点ビハインドの5回裏2死一、二塁。「9番投手」レートスの打球が飛んだ瞬間、二塁走者のイチローは、ためらうことなく、トップスピードで三塁を蹴った。打球が中堅前へポトリと落ちる間に、快足を飛ばして楽々と駆け抜けた。メジャー通算1309回目となるホームイン。日本での658得点との合計で最多記録に並んだ。

 比較が難しいとされる日米合算記録とはいえ、事前に特集記事が掲載されるなど、地元メディアの間でも注目を集めていた。試合後に配布された公式記録には、1行目に「イチローがサダハル・オーの記録に並ぶ」との項目が記載されたほどだった。記録到達を知っていたレドモンド監督も「彼はチームの中で大きな位置を占めている。すばらしい男。よく笑っているし、マイアミを楽しんでいるよ」と、絶対的な信頼を寄せる。実際、左翼イエリチが腰痛のため、15日間の故障者リスト(DL)入り。当面は、イチローのスタメン出場が確実でもあり、低迷からの浮上にベテランの働きは欠かせない。

 もっとも、当のイチローは、記録到達をよそに、試合終了15分後、クラブハウスが開放される以前に、早々と帰路に就いた。イチローにとって王氏といえば、06年の第1回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で共に戦っただけでなく、人間として最も尊敬する大先輩。記録上とはいえ、「肩を並べる」ことを、おこがましく感じていたに違いない。

 かつて「打つことだけではなく走ること、守ること全てができないと、この世界で戦っていくのは難しい」と話したことがある。その言葉通りの働きで、今季初の3連勝に貢献した。そんな日々の積み重ねの延長に、新たな記録があった。【四竈衛】