マーリンズのイチロー外野手(41)が「王監督」の記録を超えた。ナショナルズ戦に「7番左翼」で出場し、第4打席に右前打で出塁。続くエチャバリアの本塁打で生還し、日米通算1968得点となり、前日並んだ王貞治(巨人)の持つ日本プロ野球記録を上回った。イチローは5試合連続安打となる4打数2安打の活躍で、マ軍は今季初の4連勝を飾った。

 心から尊敬する王氏の記録を更新したことに加え、同僚、地元マイアミのファンの祝福が、心に染みた。9回表、イチローが左翼の守備に就くと、中堅後方のスクリーンに「1968」の数字が浮かび、自然と拍手がわき起こった。「記録のときって、自分の気持ちというよりも、チームメートがあれだけ知っててくれて、おめでとう、と言ってくれて。人の気持ちの温かさみたいなものが何よりもうれしいです。僕に刻まれる瞬間ではありますね、確実に」。帽子を取ると、少しはにかむようにスタンドへ目礼を送った。

 日米合算であり、タイプの違う世界のホームランキング、王氏の得点記録だけに、単純比較は難しい。「数字を聞いてもさっぱり分からない。人にかえしてもらう記録なんで。今日だって僕は立ってるだけ。でも王監督は自分で…。そう考えると、全然比較にならないですね」。その一方で、イチローは、過去に積み上げた幾多の安打記録とは、また違う感慨を覚えていた。「他の人の記録には全然興味ないですけど、王監督の記録はどの記録も特別なものなので、ただただ光栄です」。

 2006年WBCで監督を務めた王氏を、ソフトバンク会長となった今もなお、イチローは「監督」と呼ぶ。前日、記録に並んだ際、「更新される」ではなく「更新してもらえる」と祝福した王氏の言葉は、あらためてイチローの心を揺さぶった。「人としての出来が違うということです。監督について、それは揺るぎない点です。僕の中では、永遠に植え付けられています」。野球選手としてだけでなく、人としての尊敬度は別格だった。

 記録更新に加え、イチロー自身は5試合連続安打、さらにマ軍は今季初の4連勝。「開幕からそうですけど、打席に立つ時にすごく温かく迎えてくれるし、それがありがたいです」。新たな記録を、新天地で刻んだことが、イチローには意義深かったに違いない。【四竈衛】