マリナーズ岩隈久志投手(34)が、エンゼルスを相手に完全復活を遂げ、今季初勝利を挙げた。右広背筋の故障から復帰2度目の先発マウンドに上がり、8回まで101球を投げ3安打、2四球、6三振で無失点に抑えた。8回以上を投げ無失点に抑えたのは自身7度目で、開幕当初の不振と故障を乗り越え、メジャー3年半の中でもベストに近い投球を披露した。

 開幕前には今季サイ・ヤング賞の有力候補と評されながら、3カ月以上も白星を得られなかった。ようやく、岩隈が1勝目をつかんだ。「オールスター戦前に自分の投球をして、1つ勝てたことが大きい。これから乗っていけると思う」と、ほっとした顔で言った。

 最悪の立ち上がりだった。1回、先頭四球と連打で無死満塁の大ピンチ。だが、4番プホルスを空振り三振に仕留め、後続も連続凡退に抑えて無失点に切り抜けた。「少し焦ったが、右打者の内角を強く攻めて抑えることができた。あそこから乗っていけた」。言葉通り、低めの制球とカーブを多投した緩急は、巧みそのもの。強打のエ軍打線に対し、5回以降は走者を1人も出さなかった。

 速球はこの日最速93マイル(約150キロ)と、自己ワーストの4被弾と打ち込まれた前回6日のタイガース戦より5キロも上がった。マクレンドン監督を「これが、私が知っている、大好きなイワクマだ。クマ・イズ・バックだ」と喜ばせ、敵将ソーシア監督は「回が進むにつれて球速も球質も上がっていった」と脱帽させた。

 今月末のトレード期限を控えて前回登板時には3球団以上のスカウトが岩隈を視察したと伝えられた。この日の快投で、他球団の注目度がさらに上昇するのは確実。そうした雑音に惑うことなく「とにかく取り返す。全力で自分の投球ができるようにやっていきたい」と前だけを見据えた。