栄光のメジャー時代から一転、人生のどん底を味わった経験を持つセシル・フィルダー氏(51)は今、生まれ変わったように生き生きしていた。少年野球大会を立ち上げ、数年かけて全米規模に拡大させた。

 今は野球少年たちを育てることを生きがいにし「オレは野球から多くのものを得たので、これが恩返しだと思っている」と話す。野球少年を育てる目的は、彼らを大学で学ばせること。米国には大学に行きたくても行けない子供たちが多いが、野球で大学スカウトの目にとまれば、奨学金を受けることができるのだという。

 もう1つ、フィルダー氏が恩返しをしたいのが阪神だ。自分は選手として日本プロ野球で育てられたと言い切り、日本での思い出の数々を語ってくれた。日本で一番好きだった食べ物は、神戸にある「にしむら珈琲店」のパンケーキ。そのおいしさに感激し、何度も通った。「和食も何でも好きだったし、ブレット・トレイン(新幹線)も好きだった」と、当時を懐かしんだ。

 わずか1年プレーしただけだったが、同氏は驚くほど日本での経験を鮮明に覚えていた。そして、メジャーを目指している日本の選手に「日本のチームは3Aレベルでは決してない。メジャーと同等だよ。日本の打者は誰でも、メジャーに来て活躍するチャンスがあると思う」とエールを送っていた。【水次祥子】