【ニューヨーク=四竈衛】マー君が一発勝負に沈んだ。プレーオフが開幕し、ワイルドカードゲームに先発したヤンキース田中将大投手(26)が、アストロズ相手に5回4安打2失点。2本のソロ本塁打を喫し、今季を象徴した「1発病」を克服できずに敗退した。打線も元気なく完封負けし、最多世界一球団の3年ぶりポストシーズンは、わずか1試合で幕を閉じた。

 超満員の地元ファンから漏れたため息が、苦い記憶に刻まれた。試合後の田中は、言葉の端々に悔しさをにじませた。「悔しい結果になってしまった。こういう試合展開になってしまったのは僕の責任」。打線の援護もなく完敗した。ただ1試合勝負で、先に失点した事実は、田中自身が見過ごせなかった。

 公式戦中から指摘されていた被本塁打が、図らずも大勝負の行方を決めた。2回のラスマス、4回のゴメスとも、許したソロ本塁打はいずれも先頭打者への初球だった。「両方、捕手が構えたところに投げ切れていない球を打たれてしまった」。田中にすれば、不用意のひと言では片付けたくはない。ソロ2本とはいえ、劣勢ムードを呼び、低調な打線が後手に回った。だからこそ、一切の言い訳を口にしなかった。

 エースとして期待された2年目は、心身ともに試練のシーズンだった。昨季は夏場に右肘靱帯(じんたい)の部分断裂が判明し、今季も開幕前から体調面を不安視され続けた。4月には右腕上腕部、9月には右太もも裏痛で離脱。それでも、「正直、周りにあんだけ言われたら、気にしないわけはない。でも、後半はリズムに乗れて、不安はなかった。それは自信になってきました」。周囲から「右肘」について質問されなくなるほど、たくましい姿を取り戻した。

 一方で、反省と課題も明確になった。公式戦、ポストシーズンとも開幕投手に指名されながら、いずれも敗戦投手。期待に応えられなかった事実から目を背けるつもりはない。「絶対的な投手になれば、あそこでマウンドを降ろされることはないだろうし、そういう投手にならなければいけない。より高いところを目指して投げていくだけです」。悔いを残し、完全燃焼にはほど遠かった。だが、田中のメジャー2年目には、数字以上に内容が詰まっていた。

 ◆1発に苦しんだ今季 田中は今季154投球回で25本塁打を許した。被本塁打率(9イニング平均)は1・46。昨季の0・99に比べ約1・5倍になった。規定投球回には8イニング足りないが、規定到達者78人中では74位に相当する低水準。一方で、被打率は昨季から1分9厘も改善し2割2分1厘。さらにWHIP(1イニング平均の許走者数)は0・99と、この日対戦したカイケル(1・02=リーグ1位)をしのぐほどで、安打に占める本塁打率がいかに高いか分かる。

 ▼田中がポストシーズン(PS)初登板。日本人投手のPSデビューは13年田沢(レッドソックス)以来14人目。初登板が先発は12年ダルビッシュ(レンジャーズ)以来6人目で、敗戦投手となったのは前記ダルビッシュに次いで3人目。