ポスティング制度を利用してのメジャー挑戦を容認された広島前田健太投手(27)を巡る移籍市場の勢力図が、大きく塗り替わった。熱心なラブコールを送っていたダイヤモンドバックスが4日(日本時間5日)、先発右腕ザック・グリンキー(32=ドジャースFA)と6年総額2億650万ドル(約248億円)の大型契約で合意したことが分かった。資金面で前田獲得は難しくなり、一方でグリンキーを横取りされたドジャースとジャイアンツが、前田の獲得レースに急浮上。争奪戦は西海岸の両名門球団を軸に、繰り広げられることになった。

 広島球団のポスティング容認から一夜明け、前田が移籍市場で先発投手の「最人気クラス」に浮上した。ダイヤモンドバックスが獲得の動きを悟られぬままこの日、グリンキーと電撃合意。今季19勝3敗の先発右腕は、野手を含めても史上最高の平均年俸3440万ドル(約41億3000万円)となる。

 左腕プライス(レッドソックス)と並ぶ目玉FAの去就が落ち着いたことで、岩隈(マリナーズFA)、チェン(オリオールズFA)らの「第2グループ」が「先頭グループ」へと格上げ。前田も同等の評価を得ている。ダ軍はスチュワートGMが「調査を行っており、もちろん選択肢に入っている」と前田獲得の意思を公言してきたが、グリンキー獲得により補強予算の圧迫は避けられない。譲渡金を含め総額100億円にも迫りそうな争奪戦が予想され、球団公式サイトによればまだ先発補強の可能性を残すものの、トレードになる見込みだという。

 ダ軍の後退により、同じナ・リーグ西地区のドジャースとジャイアンツが前田獲得を加速させる情勢になった。両球団はグリンキー争奪戦で一騎打ちとみられていただけに、地元紙も代役として前田の名を挙げた。両軍ともに複数のスカウトで視察を重ねており、実力を評価し、資金力もある。さらに本拠地ニューヨーク時代からライバル関係にあり、グリンキーに続く「第2ラウンド」突入となれば、負けじと契約条件も加熱しそうだ。

 またFOXスポーツはこの日、ド軍が「興味を示している」と岩隈獲得に乗り出していることを報じた。代理人は前田と同じで、拠点を置くド軍の本拠地ロサンゼルスがお膝元。ド軍は同タイプの日本人2人の力量を見極めながら、有利に交渉を進められそうだ。またブルージェイズも極東スカウトが前田を高く評価しており、有力候補に挙がっている。

 ◆ジャイアンツ ハドソンが引退表明し、サイ・ヤング賞2度のリンスカム、元阪神ボーグルソンもFAに。青木の再契約オプションを破棄して獲得資金に回すなど、先発補強を急ぐ。

 ◆ドジャース グリンキー引き留めに失敗。来季計算する先発4人はいずれも左腕で、右腕エース不在の事態に。また柳賢振は左肩手術で今季を棒に振り、来季も未知数な状況。

 ◆ブルージェイズ 極東担当スカウトがほぼ欠かさず登板試合を視察しており、獲得熱意は高い。ただオフに、日本人投手を高評価してきた前GM退団がどう影響するか。

 ◆マリナーズ 今オフも青木を獲得するなど、日本人獲得に積極的だが、すべては岩隈の去就次第。最優先事項の残留説得に失敗すれば、前田にシフトしても不思議ではない。

 ◆カブス 有力な獲得候補はこの日、通算165勝のラッキーと契約合意。先発陣はまだ手薄だが、14年途中まで在籍したサマージャとも交渉中で、前田も獲得なら予算オーバー必至。

 ◆ヤンキース 資金力ならNO・1。現ポスティング制度第1号で田中を獲得した。今年も先発補強を視野に入れるが、優先順位はサバシアに代わる左腕、右腕なら速球派を欲す。

 ◆オリオールズ 水面下に潜んでいそうな「大穴」。アジア市場を重視し、最近は韓国、台湾、日本からも上原、和田を獲得。元中日チェンがFAになり、NPB選手を調査中とも。