FA(フリーエージェント)になっていた岩隈久志投手(34)が17日(日本時間18日)、電撃的にマリナーズに残留することが決まった。3年総額4500万ドル(約54億円)で合意していたドジャースとの契約が身体検査後に白紙になったことが判明。その直後に古巣マ軍が1年契約を結んだと発表した。17年と18年は、成績などの一定の条件をクリアすれば契約が自動延長されるオプション付き。今日18日(同19日未明)に本拠地シアトルで会見に臨む。

 水面下で岩隈を取り巻く状況は急変していた。今月6日(日本時間7日)にドジャースと3年4500万ドル(約54億円)で合意したと米メディアが報じ、あとは細部を煮詰めるだけだった。ところが合意報道後、10日以上経過しても正式発表はなく、岩隈がロサンゼルス市内の病院で受けたフィジカルチェック(身体検査)で異常が発見されたとの情報も流れていた。大型契約はリスクが高いと判断したド軍が交渉を白紙に戻したとみられている。

 詳細は不明だが、ド軍は契約年数を3年から1年に変更するなど条件を大幅に下方修正したようだ。そのため、岩隈側はマリナーズとの交渉を再開した。こちらも契約年数は当初提示の2年から1年に短くなったものの、一定の条件を満たせば、2年目、3年目の契約が延長されるオプションが付いた。提示はいずれも1年契約だったが、最終的には愛着のある古巣を選択した。

 ラブコールを送り続けたマ軍が、契約が宙に浮いた岩隈に救いの手を差し伸べる形となった。肩や肘を痛めた経験があり、故障のリスクがあるのは承知の上。ディポトGMはチームが長い低迷から抜け出すためには欠かせない戦力とみていた。今季終了後に提示した1580万ドル(約19億円)のクオリファイングオファーを拒否されても評価は変わらず。ド軍との交渉難航で巡ってきた機会を逃さず、1度はフラれた相手にすぐさま再アタックをかけた。

 シアトルのファンへの一足早いクリスマスプレゼントにもなった。ディポトGMはこの日、球団スタッフのホリデー・パーティーで岩隈との契約を電撃発表。「ここ数日でチャンスが巡ってきた。当初からクマ(岩隈の愛称)は最優先事項だった」と喜びを隠さなかった。同学年の青木との日本人コンビで、チームを15年ぶりのプレーオフ進出に導く活躍が期待される。

 ◆岩隈の故障歴 楽天時代の07年オフに右肘の遊離軟骨を除去する手術を受けた。11年5月には右肩の腱板(けんばん)を痛めて約2カ月間離脱。大リーグ移籍後は14年1月、オフの自主トレ中に右手中指の腱を損傷し開幕に間に合わず。今年は4月に右広背筋を痛めてDL入り。