「見納めですよ」と笑いながら“画伯”はペンを走らせた。タイトルは「手を振って、行ってくるよ」。ドジャース前田健太投手(27)が11日、成田空港から米ロサンゼルスに向けて出発。昨季お立ち台恒例だったイラスト披露、最後の作品は飛行機と笑顔で旅立つ自分の姿だった。「1年間トレーニング積んできます。帰ってきたらすっごくうまくなってるかも。ビックリさせてやるからな!」。絵画修業にでも行くように、ジョークを飛ばした。

 表情には少しの緊張も浮かんだ。知人がいない、初めての米国生活。不安は拭い切れないが「黒田さんに相談させてもらいました。野球の話も、街の話も」。ド軍OBでもある広島黒田に教えを請うた。チームに溶け込むだけでなく、日本から約3週間遅れで始まる米国キャンプでは、オープン戦での即アピールが不可欠になる。

 米アリゾナ州グレンデールで迎えるキャンプインは20日。「日本では自分の調整優先で、内容は気にしてなかった。でも1年目なので、しっかり抑えて結果を出さないといけない。開幕ローテーションに残って、シーズンを通して貢献できるように」。練習から自主性が重んじられる。日本で30球ずつ2回、ブルペンに入り、実戦に入る準備を整えてきた。

 黄金世代と称される「88年組」では既に、ヤンキース田中の名がメジャー球界に知れ渡っている。「向こうでは『ケンタ』が多かったので、もしかしたら『マエケン』と呼ばれることは少なくなってしまうかもしれないですね。まずはキャンプをしっかり終える。これから頑張っていきたい」。広島で親しまれたマエケンは日本を離れ、世界のケンタへの1歩を踏み出した。【鎌田良美】