【フリスコ(米テキサス州)1日(日本時間2日)=水次祥子】昨年3月に右肘靱帯(じんたい)再建術を受けたレンジャーズのダルビッシュ有投手(29)が、423日ぶりにマウンドに戻った。傘下2Aフリスコで術後初めてのリハビリ登板。2回、32球を投げ無安打無失点のほぼ完璧な内容でカムバックを飾った。速球は最速97マイル(約156キロ)を記録して、復帰後に目指す大きな挑戦の第1歩を踏み出した。

 9球目。左中間にある電光掲示板に表示される球速が、97マイル(約156キロ)と出た。試合後のダルビッシュは弾んだ口調で話した。

 「間違えないで欲しいのは、ここのスピードガンは2マイルくらい遅いらしいので、そこのとこだけ、ちゃんと考慮して書いてください」

 報道陣に最速99マイル(約159キロ)と書くよう、おどけてリクエストした。昨年3月17日に手術を受け、今年2月半ばからブルペン投球を再開。4月13日から3度のフリー打撃登板。着実に階段を上ってきた。それでも、実際に99マイルだったとすれば、最初のリハビリ登板としては驚異的だ。

 故障後であっても、トレーニングで体をつくり、球速を上げる野望を持つ。同27日には「ノムさんも言っていたじゃないですか。ピッチャーの球は速くならないものだと」と話し「球速は天性のもの」という野村克也氏の理論を覆すことに意欲をみせた。決して若くはない29歳にして、限界に挑戦する-。野望への第1歩としては上々だった。

 昨年3月5日のオープン戦で肘を痛めて以来の試合のマウンド。気持ちは前日からすでに高まっていたという。登板当日、誰の目にも明らかなほどテンションが上がっていた。足首を痛め同じくリハビリのため出場していた女房役ジメネス捕手も「ウオームアップのキャッチボールを、いつもより30分も早くやろうと言ってきた。ダッグアウトでも興奮していた。ダンスを踊るような足取りだったよ」と明かし、ダルビッシュ自身「今日はもう何か、普通のリハビリ登板1回目なのに、いきなりメジャーのノーアウト満塁くらいの気持ちでつい投げちゃってたので」と特別な日だったと振り返った。

 ダルビッシュを見ようと、球場には1万1842人が詰め掛け超満員。ダルビッシュのユニホームやTシャツを着た人であふれ返っていた。登板時は「ユウ(有)!」と大歓声が飛んだ。降板時は総立ちのファンからスタンディングオベーションを受け、グラブを上げて応えた。「1年いなかったのに、忘れないでいてくれたので、それは本当に感謝です」としみじみ話した。早ければ今月下旬のメジャー復帰へ向け、14カ月ぶりにマウンドにたどりついた。自分の居場所に立って感無量。右腕は、目を潤ませていた。