マーリンズのイチロー外野手(42)が、わずか3日間で打率をほぼ1割上げる離れ業を演じた。23日(日本時間24日)、本拠地マイアミでのレイズ戦に「1番左翼」で出場。5打数4安打1打点1得点と大活躍した。故障した正左翼手イエリチの代役として3戦で計10安打をマークし、3割1分9厘だった打率は4割1分7厘まで上昇。メジャー通算3000安打へ残り40本、ピート・ローズの最多安打記録(4256本)まで日米通算であと18本に迫った。

 体形も、シャープなスイングも10年前と変わらない。3戦10安打はマリナーズ時代の06年6月に11安打して以来。イチローは「ああそうですか。全然覚えていない」と淡々としていたが、42歳以上ではメジャーで122年ぶりとなる偉業だ。打率も4割を超えた現役最年長野手は「42歳とかもういいし。ほっとけや。やかましいわ」と笑った。

 左腕相手でも関係なかった。1回に反撃の起点となる中前打を放つと、2回は左前打、4回は右前へ適時打と、3方向へ打ち分けた。8回、同点に追いついてなお1死一塁では、内角速球を右前に鋭く飛ばして好機をつくり、勝ち越しにつなげた。接戦を制し「しんどいけど野球してる実感が持てている。楽しいわけじゃないけど実感がある」と充実した表情を浮かべた。

 前日の試合、大リーグ草創期に「安打製造機」の異名を取ったW・キーラーの通算安打数を抜いた。そのキーラーが語った安打のこつは「球をよく見て、人のいないところに打つこと」。イチローも同じ境地に達しているのかもしれない。この日、痛烈なゴロは測ったように内野手の間を抜け、飛球は必死に伸ばすグラブの先を越えて外野で弾んだ。

 今季外野のレギュラーは不動で、全員20代と若いためほとんど休養を必要としない。調子に関係なくイチローの出番は激減。今月9日から2週間は11試合連続で先発を外れた。それでも、試合のなかった19日に独り球場で練習するなど準備は怠らず爆発の時を待ち続けた。「出てないときでも、ぼーっとしていることはない。体はごくごく普通です。出てない時の方がしんどい」と事もなげに言った。

 イエリチの復帰は間近。うれしい悩みを抱えることになったマッティングリー監督は「イチローの年齢について話題にするのはもうやめよう。チームにとって完璧な存在だ」と絶賛した。

 ▼イチローが1試合4安打以上を月間2度以上記録したのは、マリナーズ時代の09年5月以来7年ぶり。3試合10安打以上の固め打ちは06年6月6~8日ツインズ戦で4本→4本→3本と続けて以来。

 ▼ESPN電子版によれば「42歳以上の3試合で計10安打」は、1894年にキャップ・アンソン(シカゴ)が同じく42歳で記録して以来の快挙。19世紀を代表する強打者で、通算3011安打、528本塁打。1939年に殿堂入りした。