ヤンキース田中将大投手(27)は、引いてから押した。緩いカーブで相手を前に出してから、満を持して直球を刺した。3者三振の立ち上がり、エンゼルスの3番はトラウト。簡単に追い込み、真ん中高めの93マイル(約150キロ)で空振りを奪った。勢いのままに0を並べて10勝目。メジャー1年目から3年連続の2ケタ勝利に達し、初の規定投球回(162)クリアもあと1イニングに迫った。

 ピンストライプのユニホームに袖を通して2年半。今、最も状態がいい。「『これだ』がある。繰り返しになるが、考えずに投げられている」と、8月に入って同じフレーズを繰り返す。打者は直球に差し込まれ、変化球を待ち切れない。「いいボールがいっているから、そうなっている」。8月は27イニング、打者106人に対して無四球。ストライクゾーンの中で相手を自在に操る姿が楽天時代と重なる。

 ボールの引き出しは明らかに増えた。右打者の内角をえぐるツーシーム、左打者の内角をえぐるバックドア。スプリットの軌道の投げ分け。ただ、日本にいるころから変わらず、さらに洗練された田中の幹がある。右足1本で立つ美しい軸だ。

 この日、無走者時に左足を上げてから接地するまでの平均タイムは1秒552。初の沢村賞を獲得した11年の平均1秒505より、さらに長くなっている。球持ちが長いから、いつも制球よく自分の土俵で戦える。技術については「継続していけたら」と納得し、10勝は「こんなところで達成感はないし、持ってはいけない。シーズン通して最後まで投げること。ずっと言ってますけど」と興味なかった。コツコツ積み上げ土台を固めた。ヤ軍のエースとして一気に跳ねる。【四竈衛、宮下敬至】

 ▼田中が3年連続2ケタ勝利。日本人の3年連続2ケタ勝利は95~97、01~03年の野茂、10~14年の黒田(5年連続)、12~14年のダルビッシュに次ぎ4人目。渡米1年目からでは野茂、ダルビッシュに次ぐ3人目となった。楽天時代の09年からは8年連続で10勝以上。7月27日アストロズ戦の3回から続ける連続イニング無四死球を30回に伸ばした。