タイトル争いの好投もチームの勝利に結びつかなかった。ヤンキース田中将大投手(27)がレッドソックス戦で7回を4安打3四球で1失点、メジャー自己最多となる14勝目の権利を持って救援陣に託したが、まさかの逆転サヨナラ負けで勝利投手を逃した。それでも防御率2・97で、ア・リーグ1位に浮上した。

 チームにとってもプレーオフ争いに踏みとどまる大きな1勝が、ヤンキース田中の目の前で一瞬にして消えた。5-2とリードした9回裏の守りで、救援陣が崩壊。中継ぎ2人をつぎ込んで1死一塁となって守護神ベタンセスを投入。2死一、三塁からオルティスとベッツの連続適時打で1点差に迫られ、最後はサヨナラ逆転3ランを浴びた。

 まさかの展開に田中の表情からも生気がうせていた。無念さを押し殺しながら、「リズムに乗っていく部分では難しかったですけど、我慢しながら、何とか1点で切り抜けられたことは大きかった」と振り返った。

 序盤は味方打線が得点を重ねてリードしたことで攻撃が長くなり、リズムを作れなかった。3回に1死満塁のピンチに陥り、主砲オルティスの犠飛で1点を返された。3回までに50球を要した。「あそこで大量点取られることが一番ダメだったんで。(犠飛後に)ここで切ろうという、強い気持ちを持ちながら投げました」。奪三振0は楽天時代を含め、日米通算249試合目で初の珍記録。それでも4回以降の4イニングは43球で料理したように、ゴロを打たせながら、7回まで投げきった。ジラルディ監督は「三振がなかったのは珍しいが、この(狭い)球場ではゴロアウトを取ることが重要。彼はアンビリーバブルな投球をしてくれた」と力投をねぎらった。

 地区首位レ軍との4連戦初戦を手痛い敗戦で落とし、ワイルドカード争いとともに、厳しい状況に追い込まれた。それでも田中は「切り替えてやっていくしかない。変わらずにやっていくだけ」と残る登板予定3試合で、ベストを尽くす。【水次祥子】

 ◆64年ぶり快挙へ ヤンキース田中の防御率が2・97となりア・リーグのトップに立った。左打者が有利なヤンキースタジアムをホームにしているヤ軍投手の防御率2点台は、1997年のD・コーン(2・82)とA・ペティット(2・88)を最後に1人もいない。防御率のタイトル獲得となれば、80年のR・メイ以来36年ぶり。右腕では52年のA・レイノルズ以来64年ぶり。

 ◆ライバルは新人 ア・リーグの防御率のタイトル争いには「隠れ1位」がいる。タイガースの新人フルマーはシーズン開幕から約1カ月後にデビューし、防御率2・76をマークしている。先発予定の16日(日本時間17日)のインディアンス戦で3回1/3を投げれば規定投球回に達する。大量失点しない限り、田中を抜いて1位に浮上する。

 ◆日本人投手の防御率争い 後半戦でトップに立ったのは13年8月22日の黒田(ヤンキース)以来。黒田はトップ浮上後、7試合で自責点31となり終了時11位。シーズン終了時の最高は95年野茂(ドジャース)の2位。