日本人ルーキーの最多勝に並んだ。ドジャース前田健太投手(28)が、2位ジャイアンツを相手に、5回を3安打2失点(自責1)と力投。自らの適時打と打線の大量援護もあり、12年ダルビッシュ(レンジャーズ)が持つ日本人1年目最多のシーズン16勝目を挙げた。

 余力があっても、投げ足りなくても、前田は納得していた。5回を88球。打線の援護で大差が付いたこともあり、5回裏の打順で代打を送られた。勝ち星を手にしたとはいえ、エースだった広島時代や今季序盤であれば、消化不良だったに違いない。だが、今は違う。「先を見据えながらやらないといけない状況。大事な試合に、力を残せるようプラスに考えたい」。10月のポストシーズンは約4週間の長丁場。目先の結果にとらわれない首脳陣の方針に、異論はなかった。

 初回は初コンビの捕手ルイーズと呼吸が合わず、9球で1点を先制されたが、味方打線がその裏に逆転。前田自身も2死一、二塁から5点目となる中前適時打を放った。序盤で白星を手繰り寄せ、「すべてが自分の力というわけではない。チームに助けられながら16勝を重ねられたことは、僕にとってはいい結果だと思います」。試合後、謙虚に振り返りながら、ここまでの道のりには少しだけプライドをのぞかせた。

 今年1月の契約直前、右肘の異変が発見され、米国内では不安説もささやかれた。だが開幕以来チームでただ1人、先発ローテを守り続け、30試合に到達した。「すごく細くて体が弱いだろうと思われていたんでしょうけど、実は体が強いんです」。少年期には水泳、サッカーなど、野球以外の競技でも体の根幹を鍛えた。1年目最多タイの白星以上に、疲労感なく終盤戦を迎えられる状態が、満足できる部分だった。

 宿敵ジ軍に3戦3勝の前田の活躍もあり、地区4連覇のマジックは「5」に。今後の勝敗次第では、次回登板予定の27日(同28日)パドレス戦で地区Vが決まる可能性もある。「できればシビれたくはないです。楽に優勝できたり、楽に勝つのが一番。ただ、そういう状況で抑えたり、勝ったあとの気分は最高ですから」。ジョークに本音を交えながら、プロで初めて味わう優勝が待ち遠しそうだった。【四竈衛】