悲痛な思いを胸に、マーリンズのイチロー外野手(42)が26日(日本時間27日)、亡き球友へ惜別の安打を放った。前日にボート事故で、24歳で急逝したホセ・フェルナンデス投手の「追悼試合」となったメッツ戦。7回に代打出場して左前打を放った。マ軍は全員が同投手の背番号、永久欠番となる予定の「16」を付け、7-3で快勝した。

 突然の悲報を耳にして以来、イチローは現実を受け入れられていなかった。「昨日1日、いろんなことを思い出していたんですけど、今日起きても、本当なのかと…。でも、今日1日が終わったら、やっぱいないんだな、本当なんだって…」。試合前には追悼セレモニーが行われた。マ軍ナインは「16」と刻まれたマウンド周囲にひざまずき、涙を浮かべながらグラウンドへ散った。その一方で、イチローは、イチローらしくあることで故人に哀悼の意を示した。「今日は特別な日でしたが、僕のやっていることを変えて欲しくないと思うんですよね、彼は」。淡々と準備を進め、代打で起用された7回裏には鮮やかな左前打。「僕ができることは今日も同じようにやったという1日でした」としみじみ振り返った。

 試合後は、込み上げる思いを包み込むように、静かに言った。「この1本は、彼にあげます」。メジャー通算3029本目の安打は、イチローにとって忘れられない1本になった。(マイアミ=四竈衛)