気持ちの高ぶりは、すぐにプレーの集中力へとつながる。1回表、いきなりイチローが見せた。エルナンデスの低めに落ちるカーブを、新庄が守るセンター前にはじき返した。昨季のアMVP男に貫録の一打を見せつけられ、新庄も燃えた。その裏だ。昨季17勝右腕アボットの高めに浮いた90マイル(約144キロ)直球を強振。左翼線への二塁打で応戦した。日本人リードオフマンの競演を、超満員1万1225人の拍手喝さいが包み込んだ。

 戦いを終え、クールなイチローが熱い言葉を口にする。「去年、野茂さんとやった時もそうでしたけど、初めがなければ2回目はないわけですから。そういう(日本人野手の対戦)経験ができることは、素晴らしい。将来的に特別じゃなくなる日が来るかも知れませんけど、今日がその初めての日ですから。そこに自分がいることは、素晴らしいですね」。新庄も「楽しかったです」と、ゆっくり吐き出した短い言葉に深い感慨を詰め込んだ。

 メジャーで初めて実現した日本人野手の対戦。オープン戦とはいえ、海を越えて戦う男たちの真っ向勝負に、本場のファンが酔いしれた。幾度も修羅場を経験してきたイチローと新庄にとっても、いつまでも記憶に残る1日となったに違いない。

 ◆日本人大リーガー同士の対決

 公式戦の投手同士では97年6月18日の野茂(ドジャース)と長谷川(エンゼルス)が最初で、野茂が先発、長谷川は救援(ともに勝敗関係なし)だった。先発対決は99年5月7日、伊良部(ヤンキース)と鈴木(マリナーズ)が最初で、伊良部が勝利投手、鈴木が敗戦投手になった。投手対打者は、昨年4月13日に長谷川がイチロー(マリナーズ)と初対戦し、イチローが遊撃へ内野安打を放った。

※記録と表記は当時のもの