プレーバック日刊スポーツ! 過去の3月19日付紙面を振り返ります。2003年の1面(東京版)は戦争の影響によるMLB日本開幕戦中止の記事でした。

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 大リーグ機構は18日、東京ドームで25、26日に予定していた開幕戦「アスレチックス対マリナーズ」を中止することを決めた。前日17日にブッシュ米大統領が、イラク・フセイン大統領に48時間以内の亡命を突きつける最後通告。開戦必至の情勢となり、大リーグは米政府と協議の上、日本開催の中止の最終結論に達した。これにより22、23日に予定されていたマ軍、ア軍と巨人、西武、ダイエーのオープン戦も消滅。国内3球団による練習試合に変更されることになった。

 大リーグ側が、日本開幕戦を中止するとの結論を出した。開戦すればテロの危険度が増し、他国で興行を行うことへの心情的な問題もある。セリグ・コミッショナーら米球界首脳はこれまで、来日するかどうかについて「ワシントン(政府)に従う」との姿勢をとってきた。18日、大リーグ機構首脳は米政府と協議し、中止という最終結論に達した。00年のカブス対メッツ以来となる日本開幕戦は、直前で消滅した。

 ブッシュ大統領が前日、イラクに最後通告を突きつけたことで、いよいよ決断を迫られる状況となっていた。スケジュール的に、ぎりぎりの段階だった。マリナーズはブッシュ大統領が設定した「48時間」より前の19日昼、アスレチックスはリミットと同時刻の午後6時にキャンプ地のアリゾナ州フェニックスから、それぞれ日本へ飛び立つ予定だった。開戦前の段階でも、リミットの前日中に結論を出さざるをえない状況だった。

 緊迫した状況となった18日、日本のコミッショナー事務局にはファンや関係者からの問い合わせが相次いだ。長谷川事務局長は「われわれは受け身。あくまでホワイトハウス(米政府)次第」と困惑した表情を浮かべていた。日本側へは、今日19日午前中に、正式に伝えられる。

 イチロー、佐々木、長谷川ががい旋して行われるはずだった初のマリナーズ公式戦、さらにア軍−巨人、マ軍−西武(22日)、ア軍−ダイエー、マ軍−巨人(23日)のオープン戦も日本のファンは楽しめなくなった。

 オープン戦については、開戦の可能性が高まってきたここ数日間、主催の読売新聞社を中心に日本側も善後策を練っていた。3チームにとっては最終調整の場でもあり、中止になる場合を想定。この日までに22日に巨人−西武、23日に巨人−ダイエーのカードを行うことで、合意した。ダイエー佐藤取締役は「中止になったとしても、巨人と試合をすることは決まっている」と話し、西武も主催者側からの「もし来日できないようであれば巨人戦になる」との打診を了承した。夢の対決は、戦争、テロの恐怖に奪われた。開幕へ向け、最終調整の場だけは確保された格好だ。

 ◆テロ、戦争の影響 01年9月11日の米中枢同時テロ事件の際には、大リーグは約1週間ゲームを停止。シーズン自体もずれ込み、ワールドシリーズが史上初めて11月に行われた。NBAではテロ事件のため、同年10月に北米以外で予定していたプレシーズン戦全6試合が中止になった。日本では前年度王者レーカーズがウォリアーズと対戦するはずだった。また、今回、日本サッカー協会の川淵三郎キャプテン(会長=66)が、米国のイラク攻撃が始まれば、日本代表米国遠征を中止にすると示唆していた。しかし米国側の要請により、遠征は決行されることになった。

※記録と表記は当時のもの