マエケンは「ラッキーボーイ」だ-。ナ・リーグ優勝決定シリーズが開幕し、ドジャースがカブスに逆転勝ちを収め、初戦を制した。3番手で登板した前田健太投手(29)が、わずか5球で1回無安打無失点と完璧に封じ、地区シリーズ第2戦に続き、ポストシーズン(PS)2勝目を挙げた。なお、第2戦は15日(同16日)、同地でド軍ヒル、カ軍レスターの両左腕の先発で行われる。

 5万4289人の地元ファンは、その先に勝利があることを肌で感じていた。2-2の同点で迎えた6回表1死。前田がブルペンからマウンドへ走り始めると、超満員のスタンドは大きな拍手と歓声で出迎えた。地区シリーズ第2、3戦で演じた快投は、いずれもド軍に白星を呼び込んだ。前田の登場は、間違いなく、勝利へのステップだった。

 まずは4番コントレラスを初球のスライダーで遊ゴロ。4回に先制2ランを放ったアルモラは、時速153キロ直球で三ゴロに仕留めた。1点を勝ち越した7回表は、6番ラッセルを1球で左飛。わずか5球で右打者3人からアウトを奪い“右キラー”としての役目を終えた。「5球しか投げてないんですけど何とか抑えられて良かった。期待してもらっているのを球場で感じるので、僕にとってうれしいことです」。勝利を呼ぶ男は、ファンへの感謝を口にした。

 今PSは救援として3試合に登板し、9、12、5球と全26球で2勝1ホールド。その間、ボール球は7球と、ストライク先行の攻撃的投球で、自軍にリズムを呼び込んできた。「たまたま運が良かっただけ。誰に勝ちがついてもチームが勝てばいいんです」。毎日の練習メニューやブルペンでの準備にしても、依然として手探りであることに変わりはない。

 同じ組み合わせだった昨季の同シリーズでは、第1、5戦に先発し、いずれも試合は敗れた。現時点では「それは、もう…」と、多くを語ろうとはしない。今は、必要とされる役割に専念することが最優先。1988年以来、29年ぶりのWS進出に、もはやリリーバー前田は欠かせない。【四竈衛】

 ▼前田がポストシーズン(PS)通算2勝目。日本人投手のPS通算2勝以上は松坂(レッドソックス=3勝)黒田(ドジャース=2勝)に次ぎ3人目。救援で2勝は初めてになる。投球5球での勝利は13年田沢(レッドソックス)の2球に次いで少ない。今年のPSは田中(ヤンキース)ダルビッシュ(ドジャース)も勝っており、日本人の年間4勝は08年の3勝(黒田2勝、松坂1勝)を上回る最多となった。