【ピオリア(米アリゾナ州)23日(日本時間24日)=四竈衛】マリナーズのイチロー外野手(44)が、マイナーの練習試合で頭部死球を受け、途中退場した。レンジャーズのマイナーに所属する左腕のツーシームが、ヘルメットを直撃して約1分間倒れ込んだ。意識はハッキリとし、自力で立ち上がったが、右ふくらはぎ痛などによる実戦不足を取り戻そうとする中でのアクシデント。24日(同25日)の再検査次第だが、29日(同30日)の開幕まで予断を許さない状況となった。

 ヘルメットを直撃する鈍い音が響いた瞬間、グラウンド中が静まり返った。崩れるように倒れ込んだイチローをコーチらが取り囲む。左腕マンはマウンド上で真っ青になり、頭を抱えへたり込んだ。

 隣り合わせの球場で同時進行するマイナーの練習試合を往復していたイチローの第4打席。時速91マイル(約147キロ)のすっぽ抜けたツーシームに対し、イチローは反射的に避けようと試みたものの、シュート回転で食い込んでくる球が直撃。跳ねたボールはバックネットまで転がった。

 イチローの意識はハッキリしていた。倒れたまま、トレーナーの問いかけに「大丈夫」と答え、約1分後にはジョークを飛ばして周囲を笑わせ、自力で立ち上がった。トレーナーに付き添われながらも、しっかりとした足取りでクラブハウスへ向かった。愛車のハンドルを握り、ファンに手を振りながら家路に就いた。

 大リーグでは脳振とうを起こした選手は7日間の故障者リストに入る。厳密なガイドラインを定めることで後遺症対策を進めてきた。イチローはこの日、施設内で受けた検査では脳振とうの症状は出なかったという。ディポトGMは「異常はないとの結果を得た。明日(24日)、再検査を受け、今後の出場予定などを決める」と談話を出した。

 脳振とうではなくとも、14日に痛めた右ふくらはぎの状態が万全ではない中で、痛いアクシデントだ。死球前の3打席では、1打席目こそ空振り三振を喫したが、その後は右中間を破る二塁打、さらに中前打を放つなど上昇気配を見せていた。だが、死球の影響からも、今後の試合出場は慎重にならざるを得ない。開幕戦まであと6日。災難続きのイチローにとって、ここからが正念場の日々となる。